[被爆体験者敗訴] 政治決断で全面解決を
( 12/24 付 )

 原爆投下時に国が指定している地域の外にいた「被爆体験者」が、被爆者健康手帳の交付などを求めた第1陣訴訟で最高裁は一、二審に続いて被爆者と認めない判決を言い渡した。387人の敗訴が確定した。
 指定地域で線を引き、内外で援護に差をつけた行政の判断を最高裁が追認したのは残念だ。
 原告は、原爆投下後に降った灰を手で払って飲み食いした人や爆心地から10.5キロ先で閃光(せんこう)と爆風に襲われた人たちなどで、今も体調不良に苦しんでいる。
 被告の立場である長崎市も国に指定地域拡大を求めている。体験者の高齢化が進んでいることも考慮し、政治決断で全面解決に取り組むべきだ。
 被爆地域は、国が原爆投下時の行政区画に基づいて定めた。長崎の場合、爆心地を起点に南北に半径約12キロ、東西に同約7キロのいびつな楕円(だえん)のような形だ。
 原爆に遭った場所が爆心地から同じ距離でも被爆者になる人とならない人がいて、医療費などの援護内容で格差がある。
 個々の被爆体験ではなく、線の内か外かで区別をつける国の姿勢には疑問を抱かざるを得ない。
 被爆者援護法は、(1)投下時に指定地域にいた(2)投下から2週間以内に長崎市に入った入市被爆のほかに、(3)投下時やその後に放射能の影響を受ける事情があった場合に被爆者と定めている。原告は(3)に当てはまると主張していた。
 だが、二審の福岡高裁判決は「爆心地から約5キロまでの地域に存在しなかった者は、健康被害を生じる可能性があったとは言えない」と判断し、最高裁も「二審の判断は是認できる」とした。
 一方で、同種の裁判の第2陣訴訟で長崎地裁は昨年、被ばく線量の推計に基づいて原告の一部に被爆者健康手帳を交付するよう長崎県などに命じた。
 指定地域外にも被爆者がいると認めたことは意義があり、今後の裁判の行方が注目される。
 気掛かりなのは第1陣、第2陣訴訟とも、「原爆放射線で健康被害を生じる可能性がある事情があった」という証明を原告側に求めていることだ。
 70年以上も前の被爆の証明を高齢の原告に課すのは酷である。
 最初の提訴から10年が過ぎ、二つの訴訟に加わった体験者ら計549人のうち、今年10月末時点で80人近くが亡くなっている。
 最高裁は「実質的に国家補償的配慮が根底にある」として、訴訟を遺族が引き継げるとしたが、国は体験者の生存中の救済に力を尽くしてもらいたい。