[安倍政権5年] 謙虚な政治を求めたい
( 12/27 付 )

 安倍晋三首相が政権に復帰してから丸5年を迎えた。
 安倍政権は堅調な内閣支持率を後ろ盾に「1強」体制を構築し、長期政権の地歩を固めている。
 政権の特徴は強権的な体質にある。巨大与党の数の力を背景に特定秘密保護法や安全保障法制、「共謀罪」法など国論を二分する法律を強行成立させてきた。
 憲法や国会を軽んじる政治姿勢は歴代政権の中でも際立つ。民主政治の土台を掘り崩し、国民の分断につながりかねない行為だ。
 1強政治がおごりや緩みを生じさせている。首相は率先して襟を正すべきだ。異論に耳を傾ける度量や謙虚さを求めたい。
 安倍首相は2012年12月の自民党両院議員総会で「強い経済を取り戻し、誇りに思える日本を取り戻すことが課せられた使命だ」と述べた。
 経済面では、「アベノミクス」という大規模金融緩和と財政出動による円安株高で企業収益は増え、名目国内総生産(GDP)や有効求人倍率は改善した。
 しかし、政権が誇るほどの成果とは言い難い。最大の懸案であるデフレ脱却は達成できず、地方では景気回復の実感は乏しい。「地方創生」「女性活躍」などスローガンを次々に打ち出したが、政策の看板掛け替えの面が強い。
 外交面では「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、5年間の訪問先は70の国・地域に上った。先進国首脳の中で存在感を高めたことは確かである。
 だが、核・ミサイル開発を強行する北朝鮮との対話の糸口はつかめず、拉致問題の解決も見通しが立たない。トランプ米大統領との蜜月関係は日本外交の自主性を損なうリスクもはらむ。
 自民党では、15年秋の党総裁選で安倍首相の無投票再選が決まり責任のある政策論争の機会が失われた。党内で首相に一線を画する勢力は皆無に近い。
 一方、14年には内閣人事局が発足し、官邸主導の人事が相次いだ。こうした流れが官邸の顔色をうかがう「忖度(そんたく)政治」を強める結果となった。森友・加計学園問題が生じた一因だろう。
 首相の原動力は10月の衆院選で5連勝となった国政選挙の勝利だ。来年秋の自民党総裁選で連続3選をにらむ。視線の先に宿願とする憲法改正があることは間違いない。
 安倍1強を許している要因として、民進党の分裂など「多弱状態」にある野党の責任も大きい。
 熟議を欠けば国会は形骸化する。首相は丁寧な合意形成が求められることを肝に銘じるべきだ。