[高1自殺再調査] 遺族の不信感拭わねば
( 12/28 付 )

 鹿児島県内の県立高校1年の男子生徒が2014年8月に自宅で自殺した問題を巡り、三反園訓知事は県教育委員会に再調査を要請した。
 県教委が設置した第三者委員会は今年3月、「いじめがあったとは断定できない」とする報告書をまとめた。それに対して、生徒の母親は「調査は不十分」とする意見書を県教委に提出していた。
 知事は「学校の調査が不十分で遺族への配慮が欠けていたという指摘もある」と要請の理由を説明した。
 遺族が納得できない報告で幕引きにせず、再調査の場を設ける判断に異論はない。第三者委が解明できなかった真相が、今度こそ明らかにされることを期待したい。
 だが、遺族は行政への不信を拭い切れないでいる。
 知事が再調査要請を発表した記者会見は、遺族が県庁で報道各社の取材に応じる予定だった時間の前に、急きょ設定された。遺族に再調査要請が伝えられたのは一部県議への通知が終わった後で、知事の発表から4~5時間経過していたという。
 当事者を置き去りにするような段取りは残念でならない。これでは知事の「遺族の思いに寄り添いながら」という言葉も、子を失った理由を知りたいと願う母親らの心には響かないだろう。
 遺族は第三者委報告の問題点などを知事に直接説明したいと要望していた。知事はこれに応じ、近日中に面会が実現しそうだ。
 母親は第三者委の設置段階から「家族の要望を聞いてほしい」と訴え続けていた。知事はこの思いを理解し、母親の話に耳を傾けてほしい。再調査要請を判断した経緯についても詳しく説明する必要がある。
 こうして行政への疑念の解消に努めた上で、中立、公平な調査に徹すればいい。
 知事の再調査要請は、13年に施行されたいじめ防止対策推進法に定められた首長の権限である。
 青森県では14年の高2女子の自殺について、再調査が行われた前例がある。
 知事の付属機関「いじめ調査部会」が、県教委の第三者機関による報告書の疑問点や不足点を洗い出した。その結果、県教委側の結論を覆し、いじめと自殺に一定の因果関係を認めた。
 三反園知事の再調査要請を受けて、県教委がどんな態勢で取り組むかは明らかになっていない。客観性を最優先して、知事部局の主導による再調査も検討すべきだ。
 遺族と情報共有に努めながら、丁寧な作業を進めてほしい。