[2017年回顧] 1強政治のひずみが次々に露呈した
( 12/31 付 )

 重要な政治課題が山積する中、今年も「安倍1強」体制が続いた。政治の安定は重要だとしても政権運営の強引さは目に余り、1強政治のひずみが次々に露呈したといえよう。
 安倍晋三首相は9月、北朝鮮の脅威と深刻な少子高齢化を「国難」と位置づけ、衆院を解散した。
 だが、真の国難なら無用な政治空白を作る時間はなかったはずだ。準備不足の野党の虚を突く党利党略の判断に違いない。
 しかも憲法に基づく野党の臨時国会召集要求を拒み続けた揚げ句、議論もしないで冒頭解散に踏み切った。「森友・加計学園」問題の追及から逃れる狙いも透けた。
 憲法をないがしろにし、国権の最高機関である国会を軽んじる。安倍政権に際立つ姿勢だ。
 今年前半の通常国会では「内心の自由が脅かされる」との疑念が噴出する中、まともな質疑もせず「共謀罪」法の成立に突き進んだ。特定秘密保護法や安全保障関連法の強行成立と同様に、巨大与党の数の力で押し切った。
 数におごり熟議に背を向ければ、民主政治の土台は破壊されかねない。安倍首相は謙虚な政権運営が求められる。

■皇位安定の議論を
 衆院選は自民党が大勝した。勝因は安倍政権が積極的に信任されたというより、野党の「敵失」に助けられた面も大きい。
 希望の党の旗揚げから民進党の分裂に至る野党の混乱劇に、嫌気が差した有権者は少なくなかろう。野党第1党には立憲民主党が躍進した。野党側は巨大与党にどう対抗するか力量が問われる。
 1強政治のひずみは、官僚が官邸の顔色をうかがう「忖度(そんたく)」の姿勢にも如実に表れた。森友・加計学園問題では首相に近い人物が優遇され、行政がゆがめられたとの疑惑が強まっている。
 疑惑の中心にいるのは首相夫人をはじめ「腹心の友」や側近だ。首相自らが解明に道筋をつけない限り、国民は到底納得しまい。
 今年が施行70年だった憲法は大きな岐路に立つ。衆院選の結果、改憲勢力が衆参両院で発議に必要な定数を維持し、憲法改正が現実味を増してきた。
 改憲を宿願とする安倍首相は、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と期限を一方的に区切り、9条について自衛隊加憲案を提起した。
 憲法の議論はどういう国家や社会を築くかを土台に行われるべきだ。政権の都合や「改憲ありき」であってはならない。
 天皇陛下の退位日は19年4月30日に正式に決まった。翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位し元号が変わる。平成は31年で幕を閉じることになった。
 陛下は象徴天皇のあり方を模索してきた。皇位の安定継承という課題も積み残されており、天皇制の将来を見据えた国民的な議論が欠かせない。
 「メード・イン・ジャパン」の信頼が傷ついた1年でもあった。
 神戸製鋼所や東レと三菱マテリアルの子会社で検査データの改ざんなど不正が相次いで発覚し、日産自動車やスバルでも新車の無資格検査問題が明るみに出た。
 背景には、ノルマ優先の経営による現場の疲弊が指摘される。企業体質そのものに原因はないか徹底的な点検が必要だ。
 神奈川県座間市のアパートの一室で9人の切断遺体が見つかった事件は、現代社会に潜む闇の深さを見せつけた。
 自殺願望をほのめかす会員制交流サイト(SNS)の書き込みが容疑者との接点だった。ネット上に漂うつぶやきを社会がどう受け止めるのか考えたい。

畜産県の底力示す
 世界は分断の時代へ向かっている。戦後の国際秩序や規範が大きく揺らぎ、混迷は深まった。
 トランプ政権の「米国第一」は鮮明で世界を振り回している。習近平体制の中国は「強国建設」を掲げる。大国としての力を背景に自国利益の追求に躍起である。
 北朝鮮は核・ミサイル開発にのめり込み、危機の進行が懸念される。国際社会が結束して対応するとともに、対話の糸口を探る努力を続けなければならない。
 国連で7月に核兵器禁止条約が採択された意味は大きい。米ロ中など核保有国が反対し、米国の「傘の下」にある日本が追随しているのは残念だ。核なき世界に向け、唯一の被爆国として積極的に取り組むべきだ。
 鹿児島にとって朗報は全国和牛能力共進会の団体優勝だろう。「和牛の五輪」で鹿児島黒牛が日本一に輝き、畜産県の底力を見事に示した。知名度向上とブランド定着の弾みにしたい。
 奄美群島は今年春の国立公園化で世界自然遺産登録に大きく前進した。奄美大島と徳之島ではユネスコの諮問機関(IUCN)による現地調査が終わり、来年夏の登録が待たれる。
 天皇、皇后両陛下が屋久島、沖永良部島、与論島を訪問されたことも県史に刻まれた。島の住民の大きな喜びと励みになった。
 年が明けると明治維新150年である。NHK大河ドラマ「西郷どん」の放映などで鹿児島観光が脚光を浴びそうだ。観光素材に磨きをかけながら、一過性のブームに終わらせない工夫が必要だ。