[外交展望] 朝鮮半島の緊張緩和へ英知絞りたい
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 日本を取り巻く国際情勢は楽観できない年になりそうだ。
 最大の懸案は国際社会の制止を無視して、核・ミサイル開発を加速させている北朝鮮問題だ。
 北朝鮮は昨年、核実験や日本海に向けた弾道ミサイル発射を繰り返した。米本土に到達する弾道ミサイルの完成はそう遠くないとの見方が有力だ。
 米国は「テロ支援国家」に再指定し、北朝鮮は反発を強めている。双方に歩み寄る気配はなく、緊張はこれまでになく高まっている。
 金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領の言動は予測不能で、目を離すことはできない。
 気になるのは、北朝鮮への圧力強化を進める米国に安倍政権が追従一辺倒であることだ。圧力は必要だとしても、その先の周到な戦略が必要である。
 かつての日米韓中ロによる6カ国協議のような形で、北朝鮮を国際的な対話の場に引き込む努力が欠かせない。実現に向け、各国と力を合わせ英知を絞りたい。
 ただし、北朝鮮の核保有を認める「無条件対話」は許されない。核保有を認めれば、日本を含む北東アジアは危機にさらされ続けることになるからだ。
 安倍晋三首相は2012年の政権復帰以降、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」と銘打ち、精力的に各国・地域を訪問している。経験を十分に生かし、平和共存へ向けた努力を続けてもらいたい。

拉致解決に猶予なし
 国連安全保障理事会は昨年、北朝鮮に対し、石油の一部禁輸など厳しい経済制裁を打ち出した。米国は朝鮮半島近海への空母派遣など軍事圧力も強めている。
 圧力の効果が出るのは今年初頭から春ごろとされる。
 だが、ロシアのプーチン大統領は「北朝鮮は草を食べてでもロケットを造るだろう」と指摘したとされる。
 米朝に軍事的手段に訴える意思がなくても、偶発的に戦争の口火が切られる可能性がある。だが、軍事衝突は何としても避けなければならない。
 こうした中で北朝鮮は年明け早々、南北直通電話回線を再開させ、平昌(ピョンチャン)冬季五輪への代表団派遣を含め韓国との関係改善に意欲的な姿勢を示した。
 関係改善が制裁圧力や米国との軍事衝突を回避するための一時的な策であってはならない。
 核実験や弾道ミサイルの試射の中断など、緊張緩和に向けた具体的な行動が伴わなければ説得力はない。今後の動きを注視したい。
 拉致問題の解決も最優先課題だ。日置市の吹上浜で北朝鮮に拉致された増元るみ子さんの母・信子さんが昨年、90歳で亡くなった。
 被害者家族の高齢化は一段と進んでおり、一刻の猶予もない。

弱まる米国の指導力
 グローバル化の進展により、あらゆる面で格差が広がり価値観が多様化する中、「世界のリーダー」だった米国は弱体化して世界の混迷は深まっている。
 トランプ氏の米大統領就任からまもなく1年。国際協調を軽んじる「米国第一」主義を貫いている。
 環太平洋連携協定(TPP)から離脱したほか、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」離脱を表明した。イスラエルの首都をエルサレムに認定した問題では、国際社会からの孤立をいとわない姿勢が鮮明になった。
 内政では実現できてない公約が多く、ロシア政府による一昨年の米大統領選干渉疑惑(ロシアゲート)の捜査も進む。
 トランプ氏は奔放ともいえる発言が目立ち、超大国のリーダーとして疑問符がつく。内向きの政策に終始すれば、国際的に米国の指導力低下は避けられない。
 日本は同盟国として、こうした状態を座視していいはずがない。場合によっては、軌道修正を求めることも必要だろう。
 11月の米中間選挙の行方が注目される。議会共和党が敗北すれば、トランプ政権には大きな打撃となって、20年の次期大統領選への影響も必至だ。
 安倍首相にとって外交の正念場だ。韓国や中国、ロシアなど近隣諸国との関係改善に注力する必要がある。
 韓国は旧日本軍の慰安婦問題を巡り15年の日韓合意を検証したが、対応策の決定は先送りした。日韓合意は「最終的かつ不可逆的な解決」をうたっている。
 日本政府は韓国側に着実な履行を求めると同時に、元慰安婦の「名誉と尊厳を回復する」という基本的な考えを忘れてはならない。
 日中関係は今年、平和友好条約締結40周年を迎える。
 両政府が沖縄県・尖閣諸島を巡る対立に関し、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」を設置する案で合意した意義は大きい。
 安倍首相は中国が進める現代版シルクロード経済構想「一帯一路」に協力する姿勢を見せるほか、両首脳の相互訪問にも意欲的だ。関係改善の流れを定着させたい。
 ロシアとは北方領土の返還問題の行方が焦点となる。プーチン氏は3月の大統領選で当選するとみられる。安倍首相は5月にも訪ロして、領土問題を含む平和条約締結交渉を前進させたい考えだ。
 共同経済活動を成功させ、機運を醸成することから始めたい。