[貴乃花理事解任] 大相撲人気に影落とす
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 元横綱日馬富士関の暴行事件を巡る一連の問題で、日本相撲協会は貴乃花親方の理事解任を正式に決めた。
 処分の理由は、巡業部長として昨年秋の巡業中に起きた事件の報告義務を怠ったことや、危機管理委員会による調査への協力を拒否したことが挙げられた。
 加害者側の伊勢ケ浜親方は理事を退任したが、理事解任は初めてだ。被害者側の立場より、理事としての責任を重視した判断といえよう。
 職務を怠り混乱を長引かせた責任を考えると、処分はやむを得ない。
 貴乃花親方の処分で、事件は一区切りついた格好だ。
 だが、土俵外の騒動が今後、大相撲人気に影を落とすことは間違いない。角界は暴力体質からの脱却が求められる。協会関係者はそのことを肝に銘じ、再生を図らなければならない。
 一連の問題は、協会のガバナンス(組織統治)の欠如を浮き彫りにした。
 協会は2007年に、時津風部屋の若手力士暴行死事件が起きた際、再発防止を誓ったはずだ。
 だが、暴力根絶が実現していないことが明らかになった。
 ここまで事態を混乱させた貴乃花親方の責任も大きい。調査協力を拒否した理由などについて、公の場で沈黙を続けた姿勢には首をかしげざるを得ない。
 11月初めに鳥取県警から事件の連絡を受けながら、危機管理の初動を怠った協会の感度の鈍さは目に余る。事態収束に時間がかかった対応のまずさを猛省すべきだ。
 貴乃花親方は2月の理事候補選挙に立候補することが可能だ。出馬すれば当選は濃厚で、実質的な処分期間は短い。伊勢ケ浜親方も立候補するとみられる。
 だが、組織にダメージを与え、処分を受けたばかりの人が再び幹部に返り咲くとすれば、社会常識から大きくかけ離れている。
 暴力問題に対する責任があいまいになると言わざるを得ない。
 大相撲は古くは神事に根ざし、江戸時代から続く伝統興行だ。
 だが、協会は4年前に公益財団法人となった。伝統を守りながら、一般社会の声に耳を傾け、スポーツとして生まれ変わる必要があるだろう。
 再発防止策を講じ、コンプライアンス(法令順守)の徹底に努めるのは当然だ。
 14日から初場所が始まる。協会は、力士が取り組みに集中し、ファンが心から土俵を楽しめるような環境づくりに力を尽くしてほしい。