[米核体制見直し] 軍拡競争を招かないか
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 トランプ米政権が来月にも発表する核戦略の中期指針「核体制の見直し」(NPR)で、核兵器の役割を拡大し、核攻撃の抑止・反撃に限定しない方針を盛り込むことがわかった。
 局地攻撃を想定した低爆発力の小型核の開発も検討する。
 「核なき世界」を掲げたオバマ前政権からの戦略変更である。国連で核兵器禁止条約を採択した国際社会の流れにも逆行するもので、際限なき軍拡競争を招くことを強く懸念する。
 策定中の新指針では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の「核の3本柱」を堅持する。
 弾道ミサイルに搭載する小型核の開発・配備の検討は、急速な核近代化を進める中国やロシア、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対して優位性を確保することが目的だ。
 米政府当局者は、「多様な爆発力と射程の核戦力を整備することで、同盟国に切れ目のない抑止力を提供できる」とする。
 だが、朝鮮半島情勢を考慮しても、緊張が高まる恐れは拭いきれない。
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は今年の新年の辞で、「核のボタンが机上に常に置かれている」と米国をけん制した。これに対してトランプ氏は「私の核のボタンの方がずっと大きく強力で、しかも作動する」とツイッターに投稿している。
 指導者同士のこうした応酬は、核戦争の危険性の象徴でもある。
 核兵器の役割低減を目指したオバマ政権は2010年の前回NPRで、核使用を米国と同盟国の「死活的な利益を守るための極限の状況」に限定した。
 オバマ氏は現職の米大統領として初めて被爆地広島を訪問している。「核なき世界」の実現は遠かったものの、大国のトップが理想を発信する意義は大きかった。
 しかし、トランプ政権は基幹インフラへのサイバー攻撃などに対しても核攻撃を排除しない方向だ。米国が核使用のハードルを下げれば、世界の不安定化につながりかねない。
 「米国第一」主義に基づき、「力による平和」を追求するトランプ氏の姿勢を深く憂慮する。
 気掛かりなのは、米国の「核の傘」に頼る日本が、新指針にどう対応するかだ。
 唯一の被爆国でありながら、核兵器禁止条約にも参加しない日本に、国際社会の目は厳しい。「核兵器廃絶」に向け、毅然(きぜん)とした発言と行動を示すべきだ。