[カヌー薬物混入] 危機感持って再発防げ
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 ゆがんだ行動を思いとどまれなかったのか、残念でならない。
 2020年東京五輪を目指していたカヌーの国内トップ選手が、ライバル選手の飲み物に禁止薬物を混入していたことが分かった。
 他者を陥れようという悪質極まりない行為であり、正々堂々と力と技を競うスポーツマンシップから著しく逸脱している。
 日本の選手は高い清廉性を誇り、公正性を重んじて世界の舞台で活躍してきた。そんな信頼を揺るがし、クリーンな大会を目指す東京五輪にも水を差す前代未聞の不祥事と言わざるを得ない。
 薬物混入があったのは、昨年9月のスプリント日本選手権だ。鈴木康大選手が小松正治選手のボトルに筋肉増強剤の錠剤を砕いて投入し、小松選手はレース後のドーピング検査で陽性反応が出た。
 鈴木選手は32歳で、小松選手は7歳年下だ。自国開催の五輪に出場したい気持ちも、若手の台頭への焦りも想像できる。だが、いくら精神的に追い込まれても競技で全力を尽くし、勝負の結果を甘受する強さと潔さこそがアスリートの真価ではないのか。
 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が暫定的に資格停止とした小松選手の処分を解除し、鈴木選手に8年間の資格停止処分を科したのは当然である。
 選手たちの間では10年ごろから大会や遠征中にパドルの破損や紛失、現金の盗難も度々起きていた。鈴木選手はこれらも一部関与を認め、小松選手以外への妨害行為も証言しているという。
 日本カヌー連盟は鈴木選手を定款上最も重い除名処分とする方向だ。鈴木選手は警察の捜査にも全面的に協力し、事実を明らかにすべきだ。
 選手の飲み物の安全管理が行き届かず、道具の盗難などを止められなかった競技団体側も、危機感の希薄さは否めない。
 今後は大会中にドリンク保管所を設け、係員やカメラによる監視の強化を検討するという。実効性の高い再発防止策が必要だ。
 ロシアの国ぐるみのドーピング問題が平昌(ピョンチャン)冬季五輪に影を落とす中、日本はドーピング違反が極めて少ないクリーンな国とされてきた。誇れることだが、ドーピングの誘惑も、他人を陥れる悪意も、日本選手だけが今後も完全に無縁とは考えにくい。
 海外を拠点とする選手も増えており、禁止薬物絡みの事件が増加する可能性は否定できない。
 各競技団体が選手たちにドーピングが招く結果の重大さを伝えるのはもちろん、薬物混入を想定した対策の強化も急務である。