[原発ゼロ法案] 具体的な論議深めたい
( 1/12 付 )

 将来世代につけを回さないエネルギー政策の論議が本格化するなら歓迎できる。
 小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体が、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表した。全原発を即時停止させ、2050年までに再生可能エネルギーの発電割合を100%に拡大するといった内容だ。
 11年の東京電力福島第1原発事故で、原発への信頼は失墜した。事故はいまだに収束の見通しが立たない。にもかかわらず、安倍政権は新規制基準への適合が認められた原発の再稼働を進めている。
 原発回帰に前のめりな政府に待ったをかけ、エネルギー政策を根本から問い直す必要がある。
 小泉氏らは22日召集の通常国会で法案提出できるよう、幅広く与野党に支持を呼び掛けている。党派を超えて賛同者を集めたい考えだろう。
 立憲民主党も通常国会で「原発ゼロ基本法案」の提出を目指す。30年までに全ての発電用原子炉廃止を目標とし、廃炉にあたっては国から電力会社への支援や立地地域への経済発展策を盛り込む。
 希望の党や民進党も脱原発の立場で、通常国会に向けた野党協力に前向きだ。共産党や社民党も脱原発を掲げる。
 各野党は脱原発が選挙向けのスローガンでなく、具体的な政策であることを証明しなければならない。小泉氏らの呼び掛けに呼応するかどうかは不透明だが、通常国会の重要課題に浮上させるには野党の結束が欠かせない。
 ただし、法案が現実離れした目標を掲げるだけでは国民の支持は得られないだろう。実現性の高い工程表を示すなど、説得力のある内容に磨き上げてほしい。
 福島の事故以降、日本の原子力政策は迷走を続けている。
 事故直後は脱原発の機運が一気に高まった。政府のエネルギー・環境会議は12年、原発ゼロ目標を盛り込んだ新しいエネルギー戦略を決めた。ところが、当時の民主党政権は経済界や関係自治体に配慮し、新戦略の閣議決定を事実上見送るあいまいな態度をとった。
 その後の安倍政権は「原発依存の可能な限りの低減」との公約とは裏腹に、なし崩し的に基幹電源に復帰させようとしている。
 核燃料サイクル政策は進退窮まり、使用済み核燃料の処分は見通しが立たない。こうした難題を先送りした政策に、強い懸念を抱かざるを得ない。
 原発を取り巻くさまざまな状況に目を配りつつ、エネルギー政策の明確なビジョンを示す責任ある国会論議を期待したい。