[暴言自衛官処分] 統制する自覚に欠ける
( 5/16 付 )

 幹部自衛官が国民の代表である国会議員に暴言を浴びせる行為は、教えさとせば済む程度の軽い違反だというのか。
 小西洋之参院議員を「国益を損なう」などと繰り返しののしった統合幕僚監部の3等空佐を、防衛省が懲戒処分ではなく訓戒処分にとどめたことに疑問の声が上がっている。
 同省は3佐の行為を品位を保つ義務を定めた自衛隊法に反するが、私的な立場の言動で「シビリアンコントロール(文民統制)を否定するものではない」とした。
 昨日の参院外交防衛委員会でも小野寺五典防衛相は、文民統制は「国会と防衛省・自衛隊の組織同士の関係を律するものだ」と同省がまとめた見解を繰り返した。
 政治家と自衛官の個人の関係を想定していないから否定にはならないという理屈だが、いかにも苦しい。
 3佐は調査に、小西氏が安全保障関連法に反対していたことを動機に挙げている。この考えを踏まえれば、同法に賛成した与党議員は支持するが、反対した野党議員は非難するということになろう。
 しかも、自衛官と名乗っての暴言である。私的な立場の言動とは言いがたく、文民統制に対する挑戦と言わざるを得ない。
 小野寺氏は問題が発覚した直後に「若い隊員で国民の一人でもあるので、当然思うことはあるだろう」と3佐を擁護するような発言をした。
 自らが文民統制を担う側だという自覚に欠ける発言だ。こんな対応で武器を扱う実力組織を統制できるのか心もとない。
 小西氏は、3佐から「おまえは国民の敵だ」と罵倒されたとして、戦前に青年将校らが首相官邸を襲った「五・一五事件」を引き合いに批判した。3佐はこの発言は否定したが、「国民のために働け」「ばかなのか」などと暴言を浴びせたことは認めている。
 国会議員を特定政策への賛否によって自分たちの味方と敵に分けて捉えているとすれば、暴力によって政治を抑圧し暴走した旧軍につながる。
 これだけの行為をしながら「軽微な違反」で済ましては、あしき前例となる懸念がある。処分の再考を求めたい。
 厳しい安全保障環境を理由に政府は自衛隊の運用に前のめりだ。それに伴って制服組の権限が強くなりすぎてはいないか、意識のたがが緩んではいないか。
 一自衛官の暴走で済まさず、この機会に自衛隊の在り方を検証し直すべきだ。統制する側も、される側も責任を自覚してほしい。