[長崎原爆の日] 被爆国の責務自覚せよ
( 8/10 付 )

 長崎はきのう、原爆投下から73年を迎えた。
 今回が平成最後の「原爆の日」である。昭和から平成、そして次の時代へ。唯一の被爆国の国民として、非戦と核兵器廃絶への誓いを心に刻み続けたい。
 長崎市であった平和祈念式典には、核保有国を含めて計71カ国の代表者らが出席した。
 国連のトップとして初めて参列したグテレス事務総長は「核廃絶は国連の最優先課題。長崎から全ての国に、目に見えるように進展させることを求める。核保有国には特別な責任がある」と訴えた。
 昨年7月に核兵器禁止条約が国連で採択され、原動力となったNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」がノーベル平和賞を受賞した。世界で核廃絶へ向けた大きなうねりが起きている。
 こうした中で国連トップが被爆地を訪ね、各国に向けて「核兵器なき世界」を目指す決意をアピールした意義は大きい。
 長崎市の田上富久市長が平和宣言で「世界の皆さん、核禁止条約が一日も早く発効するよう、自国の政府と国会に署名批准を求めてください」と呼び掛けたのも、核廃絶の機運を後押しする狙いがあるからにほかならない。
 ただ、日本政府は核禁止条約に反対の立場を崩していない。安倍晋三首相はこの日のあいさつでも核禁止条約には触れず、核保有国と非保有国との橋渡しに努めると強調した。
 しかし、条約に背を向けたままで橋渡しができるだろうか。
 1月に来日したICAN事務局長が安倍首相に面会を求めると、日程上の都合を理由に断った。また、2月にトランプ米政権が小型核導入を盛り込んだ新核戦略を公表すると、河野太郎外相はすぐさま「高く評価」するとの談話を発表した。
 米国の「核の傘」への依存を強め核抑止力を頼りにする安倍政権の姿勢は、反核の世論に逆行していると言わざるを得ない。
 長崎原爆では、爆風や熱線、火災などで1945年末までに約7万4000人が死亡、約7万5000人が重軽傷を負った。今年7月末までの1年間で新たに被爆者3443人の死亡を確認。死没者名簿の記載総数は、国が定めた地域外で原爆に遭った「被爆体験者」54人を含め計17万9226人となった。
 あまたの人が愛する家族を失い、今も多くの被爆者が放射線被害に苦しんでいる。
 政府は、核兵器による悲劇を繰り返さないために「唯一の戦争被爆国」として果たすべき責務を自覚すべきである。