2023/01/10 11:08
相手は京セラ創設者の稲盛さん。言葉が出ない私を察したのだろう。鹿児島王将メンバーズカードを手に取り「ありがとうね」。それで緊張がほぐれた

稲盛和夫さん
■元鹿児島県大阪事務所長 吉松孝二さん(63)
鹿児島県庁に勤めていたころ、京セラとはいろいろな担当で付き合いがあり、創設者の稲盛和夫さんのことを知る機会も多かった。だが、さすがに直接お会いすることはなかった。
定年退職が迫り、大阪事務所長に赴任して関西鹿児島県人会総連合会の総会に出席したとき、初めてお会いできた。所長は稲盛さんの隣の席が指定席になっていた。名刺交換したが、緊張のあまり何の話をすればよいかわからず、言葉がとっさに出なかった。
これまで聞いていた厳しい経営者のイメージなど全くなかった。私の緊張を察したのだろう。私が話のネタにと持っていた、稲盛さんの親族が経営する「鹿児島王将」のメンバーズカードを手に取り、優しいまなざしで「ありがとうね」と話し掛けてくださった。
それで緊張がほぐれ、ざっくばらんな話ができたのを記憶している。この会が稲盛さんが出席された最後の総会だった、と後に聞いた。
その後、各種県人会などでお会いする機会に恵まれた。「吉松さんだったね」と優しく声をかけてくださったり、「いっとタバコにいたっくっで」と話されたり。「何と飾らず、相手に気を遣わせない人か」と感じる場面は多かった。
ある会合で、出し物の歌謡ショーの一場面。女性歌手の童謡に聞き入り、近くのホテルマンに白い紙を求めた。ショーの最中、曲がヒット曲に変わった途端、紙切れに包んだご祝儀の枚数を減らした。それを見ていた私に、はにかんだ笑顔を見せた後、ご祝儀をその歌手に渡された。
童謡や唱歌が好きで、中でも「ふるさと」を愛したことは、県人会会員はみんなが知っている。県人会で最後に出席者全員で歌う曲目も「ふるさと」。稲盛さんへの敬意を感じる一場面だった。

歌に聴き入る稲盛和夫さん(右から2人目)。手前が吉松孝二さん

関西鹿児島県人会連合会の会合で舞台に立つ稲盛和夫さん(左)と吉松孝二さん(中央)
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