新潟ある歩記

え?菊の花を・・・食べる!?(新潟ある歩記・No.3)

2022/12/2

 新潟に暮らす大学生の「さっちゃん」は、進学のため故郷・鹿児島を離れて雪国へ。薩摩おごじょ(=女性)が日々の暮らしや街を歩いてみつけた「新潟あるある」や驚き、魅力とはー?グラフィックによるちょっとした解説も!

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◆シャキシャキおいしい!口の中が花畑

 鮮やかな赤紫色で花のような香り-。お弁当の中で見つけ、よく分からないまま口にした“それ”は、味わったことのないシャキシャキとした食感をしていた。「おいしい!」。友人に聞くと、食べていたのは花びらを1枚ずつほぐしておひたしにした菊(キク)の花で、新潟県では「かきのもと」と呼ぶらしい。え? 菊の花? と驚いた。

 そう言えば、近所のスーパーで菊の花をパックや袋に入れて売っているのを目にしたことがあった。でも、まさか食べるとは思いもしなかった。

 どうやら秋には定番の「県民熱愛フード」らしい。

 「かきのもと」は新潟県内でも旧白根市、現在の新潟市南区で作られる食用菊の名称だ。他の地域では「おもいのほか」、他県では「もってのほか」などと呼ばれている。

 新潟県ではおひたしにして、からしじょうゆなどで味付けして食べることが多いようだ。

 JA新潟かがやきの「しろね北アグリセンター」によると、菊を食べる習慣は室町時代からあったらしい。でも、私は「食べる菊」があるなんて新潟県に住むまで知らなかった。何かワケがあるのだろうと調べてみると、栽培する地域も、食べる地域も限られていた。

 農林水産省によると、全国で最も「食用菊」の栽培量が多いのは愛知県。しかし、愛知県の菊は「食用」に分類されてはいるけど、刺し身のお供でおなじみの「つま」用だ。食べている人を私は見かけたことがない。実際に食べるための菊は、全国でもほぼ新潟県と東北の一部でしか作られていないそうだ。

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 ちなみに新潟県内でも栽培地は限られていて、白根地域が8割ほどを占める。

 同じ「食用菊」でも、食べるために栽培している菊は、色鮮やかで、食感が良く、大輪を咲かせるように品種改良されてきた。「かきのもと」も新潟県の気候風土に合わせて改良を重ねた品種で、「アグリセンター」によると、暖かい地方で栽培してもきれいな赤紫色などの花の色は出ないのだそうだ。

 旬は10月から11月下旬ごろまで。「冬の葉物野菜が旬を迎える前の時季に、取れる野菜が少ない地域では食べ物として重宝されたのでは」。JA職員が話してくれた推察だが、説得力がある。

 ところで、白根地域では、菊の花びらを1枚ずつバラバラにすることを「つばく」と言う。先ほどの職員が、目の前でつばいてくれた。ガクの部分を親指と人さし指で挟み、軽く押してスライドさせると、花びらが一瞬ではらりとほぐれた。挑戦してみたが、これが意外にも難しい。「ドサっと食べる」という産地ならではのテクニックなのか、と感心した。

 シャキシャキとした食感が特徴的な「かきのもと」。この食感を生み出す筒状の花びらには、アントシアニンという成分が含まれ、眼精疲労を軽減する効果があるという。さらにアンチエイジング効果も期待できるそうだ。ぜひ積極的に取り入れたい! 今風に言うなら、新潟の伝統的な「エディブルフラワー」(食用の花)といったところだ。

 実は九州にも他地域の人を驚かせる食材がある。その一つが「へちま」だ。「たわしにするアレ?」と言われがちだが、故郷の鹿児島県や沖縄県などではれっきとした食材だ。

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 へちま入りのみそ汁にそうめんを入れて食べる「へちま汁」は、鹿児島の郷土料理として親しまれているし、炒め物にする地域もある。

 県外の人から驚かれる食材はきっとどの地域にもあるはず。まだ口にしたことのない食材を探して、旅行するのも楽しいだろうな。

さっちゃん あっくん