2022/03/06 11:13
【翔べ和牛 産地はいま③】繁殖農家になりたい? 初期費用は3000万円 新規参入に資金の壁 大方は借金してのスタートに

譲り受けた牛舎で妻と牛の世話をする増森理さん=2月17日、湧水町木場
牛の購入や牛舎整備といった設備投資のため高額の資金を用意しなければならず、初めから専業農家になるのはリスクが大きいからだ。
専業で生計を立てるには繁殖で50頭、肥育なら300頭程度が必要とされる。県内に多い繁殖農家の場合、運転資金も含めると最低3000万円はかかるという。
数百万円あれば独立可能な野菜や果樹の農家とは桁違いだ。補助金や低利融資など支援制度があるものの、大方は借金してのスタートとなる。
生産基盤がそろう後継者ならまだしも、農家以外からだと並大抵の覚悟では参入は難しい。事実、直近2年間に県内で肉用牛経営を始めた125人のうち、非農家の出身は12人にとどまる。
その一人、湧水町の増森理(おさむ)さん(43)を訪ねた。
■転身
増森さんの牛舎は霧島アートの森の近くにある。脱サラして日置市から引っ越し、1年半前に繁殖農家となった。
もともとは飼料配送のトラック運転手だった。「動物に囲まれて暮らすのが夢」で、配送先や就農した同級生から牛飼いの現場を見聞きするうちに転身を決意。
41歳のとき、県の相談窓口を通じて廃業する70代の農家を紹介してもらい、弟子入りした。1年かけて基礎を学び、20年秋に牛約40頭と牛舎を有償で引き継いだ。
晴れて夢の第一歩を踏み出したが、「期待半分、不安半分だった」と振り返る。事業承継のため初期費用は比較的安かったとはいえ、借り入れは家1軒が建つほどの額に上った。
競りで価格が決まる実力の世界で、子牛に買い手はつくのか。安ければ借入金の返済計画に狂いが生じかねない。
しかも、子牛を競りに出せるのは生後9カ月前後。その間は収入がなく、蓄えは既に底をついていた。年150万円の新規就農者向け給付金だけでは生活は苦しく、妻の幸恵さん(30)がパートに出て家計を支えた。
■試行錯誤
昨年8月、増森さんは初めて去勢牛1頭を姶良中央家畜市場(霧島市)に出した。
それまで県内外の市場に足しげく通い、高値で取引される子牛の血統や体格をチェック。運転手時代に知り合った先輩農家にも指導を請うた。
「良い牛を育てるため思いつくことは何でも試した」。そう信じ、祈るような思いで競りを見つめた。
落札額は85万円。この日の市場平均より約12万円高かった。ほっとすると同時に視界が開けた。
これまでに10頭の子牛を競りに出し、今のところ想定以上の売り上げを確保できている。予定通り今春から借入金の返済も始まる。
次なる目標は描けている。「最終的に100頭まで増やし、人を雇えるくらい余裕のある収益を確保したい」。増森さんは力強く語った。
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