2022/03/09 11:07
【翔べ和牛 産地はいま⑥】「中国がトウモロコシを大量に買い付けたからだ」 飼料価格高騰にあえぐ肥育農家 子牛高に担い手不足…産地はまさに内憂外患
輸入穀物を配合した濃厚飼料を牛に与える加治佐龍さん=5日、曽於市末吉
肉の風味や口溶けを増し、見た目も美しい脂肪交雑(サシ)は、トウモロコシや大豆を配合した栄養価の高い濃厚飼料があってこそ。国内では十分な農地を確保できず、安く大量に仕入れられる米国産などに頼る。
「中国によるトウモロコシの大量買い付けが最大の要因」。JA鹿児島県経済連の担当者が相場を解説する。
飼料原料の平均輸入価格は値下がり傾向から一転、2021年に急上昇した。直近の10~12月期は1トン当たり4万1520円に達し、前年比で6割も上がった。
中国で18~19年、アフリカ豚熱が流行、食物残さを餌にしていた小規模農家が激減した。代わって、濃厚飼料を使う企業養豚が急成長。トウモロコシを日本の倍近い年間2900万トン買い入れ、最大の輸入国となった。
■見えぬ先行き
「これだけ入れても1週間もすればなくなってしまう」。曽於市の肥育農家、加治佐龍さん(41)が、大量の濃厚飼料を牛舎に補充する作業を見ながら言った。
500頭を飼い、1日に与える濃厚飼料は約4トンに上る。1年で1000万円超のコストが増えた計算だ。
輸入穀物が急騰した際に差額を補填(ほてん)する基金があり、今のところ直接的な影響は出ていない。とはいえ、表情はさえない。「正直なところ、先行きが明るいとは言えない」
コスト増に合わせて枝肉価格も上昇するのが理想だが、現状は厳しい。コロナ禍に加え、原油高や円安に伴う生活必需品の値上げで家計の財布のひもは固く、上客だったインバウンド(訪日外国人客)需要の復活も見通せない。
■競争激化
生産者が懸念するのは飼料価格がこのまま高止まりしてしまうことだ。経済大国となった中国が14億人の胃袋を満たすため、今後も穀物相場を主導していく可能性は大きい。
さらに、米国によるバイオ燃料の生産拡大、ロシアのウクライナ侵攻、世界人口の増加に伴う食糧不足など、穀物相場は上昇に振れる要素に事欠かない。
一方、子牛高や担い手不足など国内に難題を抱え、和牛産地は内憂外患のさなかにある。これから競争がますます激しくなり、全国で淘汰(とうた)が進むのは必至だ。
畜産インフラが集中し、大規模化の余地を残す北海道と九州に集約されていくとの見方もある。しかし、和牛王国・鹿児島が生き残れる保証はない。
「市場が求める高付加価値の牛を追求し続ける。それが競争を勝ち抜くために農家ができる最大の対策だ」。加治佐さんはそう信じている。=おわり=
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