2022/04/01 11:07
高値が付き「芸術品」に例えられる和牛霜降り肉 でも消費者が求めているのは赤身・・・「肥育農家は芸術家になりすぎていないか」

小田畜産は食卓に上る牛肉作りを社是に掲げる=南さつま市
これに対し、小田畜産(南さつま市)の小田雄二郎社長(40)は「肥育農家は芸術家になりすぎている気がする」とこぼす。
約4800頭を肥育し、加工・販売も手掛ける農業法人を率いる。和牛の高級化路線で庶民の手が届かなくなった現状への憂いが、自戒となって口をつく。
牛肉の価格は格付けに連動し、さらに同じ等級でもサシが多いほど高値で取引される傾向にある。そのため、肥育農家はいかにサシを入れるかに注力する。結果、高価なA5が半数近くを占めるようになった。
格付けの規格は肉の歩留まりや質を主に見た目で判断し、そこに味の評価は含まれない。「格付けを基準に取引される現状ではサシの多いA5を作らざるを得ない」。消費者の嗜好(しこう)とかけ離れた規格へのジレンマが透ける。
■経営のため
家族が美味しいと 笑って食べる牛肉を 皆様の食卓へお届けしたい-。小田畜産の社是だ。
1973年に牛2頭から事業をスタートさせた小田健一会長(67)は「海外の肉と価格競争するのではなく、主婦の財布の中身と勝負する」と解説する。
91年の牛肉輸入自由化後も、霜降り重視に傾斜していった他とは一線を画し、財布に優しい3等級程度の肉作りにこだわってきた。
ところが、創業精神を揺るがす経営環境に直面している。需給逼迫(ひっぱく)で10年来高止まりしている子牛価格と、輸入に頼る飼料穀物の高騰だ。
コストが増大し、A4やA5といった「上物」に生産の比重を移さなければ採算が取れなくなった。5年前からサシの入りやすい子牛の仕入れを増やし、3割程度だった上物の割合は7割近くを占めるようになった。
「経営のためにはもうけを出さなければいけない。ただ、今でも厳しいくらい。8割程度まで上げる必要がある」。小田会長の表情は険しい。
■こだわり
売り上げの中心である食肉会社向けに上物の扱いを増やして経営を安定させる一方、社是に掲げる「食卓に上る肉」にこだわり続ける。
赤身とサシのバランスが良く、買い求めやすい肉を自社ブランドの「小田牛」として販売する。客の受けは良く、今では7割はリピーターという。
販売を強化するため、昨年6月に新工場を完成させた。年間10トン足らずの取扱量を3年後には倍増する計画を持ち、輸出拡大を視野に入れる。
今は見た目に美しいA5がもてはやされるが、半世紀におよぶ牛作りを通し小田会長はA3クラスの肉が一番おいしいと信じて疑わない。「昔ながらの黒毛和牛のこまやかな味を守り、消費者へ届けたい」と力を込める。
(連載【翔べ和牛 第3部 A5神話】より)

社の理念を見つめる小田健一会長。葛藤を抱えながらも、食卓に上るおいしい肉を目指している
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