
昨年末、飲酒検問をする鹿児島県警=鹿児島市(本文と写真は関係ありません。画像は一部加工してあります)
南日本新聞は秋の全国交通安全運動(21~30日)に合わせ、重点項目の一つ飲酒運転根絶について、「こちら373(こちミナ)」と「みなみパス」登録者にアンケート調査をした。飲酒運転を目撃した回答者の9割超は通報しておらず、確信が持てない、関係悪化が不安といった理由でためらうケースが多かった。「今後は通報する」との回答も6割にとどまった。
アンケートは20~25日に実施。選択式や記述式で10項目程度を質問し、2610人から回答を得た。
「飲酒運転を見かけたことがある」と答えた514人のうち通報したのは49人(9.5%)。相手との関係は39人(79.6%)が「面識なし」。通報理由は「犠牲者が出るのを防ぎたい」16人(32.7%)、「他の被害につながる」が15人(30.6%)、「飲酒運転は許せない」14人(28.6%)が大半だった。
一方、通報したことがない465人(90.5%)のうち、相手が「友人・同僚」「上司・先輩」「取引先」「恋人」「家族・親戚」だったのは153人(33.6%)で、「面識なし」は272人(59.8%)。通報したと回答した人よりも、知人関係にある割合が高かった。
理由は「飲酒運転の確信を持てなかった」が148人(33.0%)と最も多く、「相手との関係が壊れそう」66人(14.7%)、「面倒くさそう」63人(14.0%)が続いた。
今後見かけた場合の対応を聞くと、「通報する」は1586人(60.8%)で、「分からない」が950人(36.4%)、「通報しない」は72人(2.8%)だった。
◇飲酒事故減ったが…摘発件数は増加
しない、させない、見逃さない-。鹿児島県警は社会全体で飲酒運転を許さない意識の浸透を掲げるが、アンケートでは通報へのハードルの高さが浮き彫りとなった。撲滅に向けた機運が高まる一方、「確信が持てない」「逆恨みが怖い」など具体的な行動をためらう声が続出。県外では条例で通報を義務化した動きもある。
自由記述は、2021年に鹿児島大学の学生が飲酒運転の車にひかれ死亡した事故への言及が目立ち、「飲酒運転は故意のもの。報道で悲惨な事故を目にするたび心が痛む」「当事者だけでなく被害者や加害者の周囲も不幸にする」など後を絶たない飲酒運転を非難する声があふれた。
数十年前にしていたと打ち明ける記述も67件。45年ほど前に飲酒運転した鹿児島市の70代男性は「軽い気持ちだったが妻にひどく怒られ、以来しなくなった。事故を起こさずに済んだ」。鹿屋市の40代女性は「20年前は飲み会で飲酒を強要され飲酒運転も横行。飲酒を断れたり、代行を呼んだりするのが常識になりホッとした」と寄せた。
06年に飲酒運転の車に追突され幼児3人が死亡した福岡県の事故を機に、酒を提供した店の責任者や同乗者を刑事罰の対象とする厳罰化が進んだ。
同県は20年、目撃時の通報を条例で義務化。停車中の運転席で飲酒、酒に酔った様子の人が運転席に乗り込もうとしている、ふらついて走行-といった場合は飲酒運転の疑いが十分あるとし、通報を呼びかける。
鹿児島県内で同様の条例は制定されておらず、「ふらふら走る車は怪しいと思うが確信が持てない」(薩摩川内市の40代女性)と通報基準への戸惑いや、「逆恨みが怖い」(鹿児島市の50代女性)など通報をためらう声もあった。
県警によると、22年の県内の飲酒がらみの人身事故は35件で、06年の197件から5分の1以下に減少。ただ、23年の飲酒運転摘発件数は7月末で200件(前年同期比39件増)と過去5年で2番目に多く、増加傾向にある。自由回答では「タクシーや代行など移動手段が減り、飲酒運転が増えるのでは」との懸念も複数件寄せられた。
県警交通指導課の鮫島勝志理事官は「車を貸さない、同乗しないなど周囲にできることもたくさんある。目撃した場合は無理に追跡せず、車の特徴や進行方向を通報してほしい」と話した。

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