【考・九州男児】こわもて、寡黙…でも毎日料理 「クッキングパパ」は真の九州男児? 人気漫画の作者・うえやまとちさん(福岡在住)に聞く

 2022/11/19 06:30
モーニングで連載中の「クッキングパパ」(うえやまとち作・講談社)。現在163巻まで発売されている(西日本新聞社提供)
モーニングで連載中の「クッキングパパ」(うえやまとち作・講談社)。現在163巻まで発売されている(西日本新聞社提供)
 大きな顎が印象的でこわもて、そして寡黙だが、時には後輩に「バータレイ!」とハッパをかける。福岡・博多が舞台の人気料理漫画「クッキングパパ」の主人公、荒岩一味(かずみ)の見た目は九州男児そのもの、か。だが、家族のため、毎日料理を作る姿は正反対のイメージ。作者のうえやまとちさん(68)=福岡県福津市=は、どのような思いで主人公を描いてきたのか-。

 連載開始は1985年。家事や育児に取り組む男性は少数派だった。「家事をやる男はダサいと言われていた。でも本当はかっこいいのでは」。そんな先を行く発想が根底にあった。

 一方の妻の虹子は、多忙な新聞記者で家事は不得意。荒岩は主に台所を担うなど家事や育児に取り組み、子どもにも優しい父親。「見てくれだけ九州男児」のイメージだったという。

 日常的に家庭や職場で料理の腕を振るいまくるストーリーに、連載前は当時の編集者から「単身赴任や妻の病気という設定が自然では」と提案されたことも。「男が毎日料理するのに、理由がいる時代だった」と振り返る。

 「妻が作った」「買ってきた」と隠していた荒岩が、周囲に料理することを明かしたのは、なんと連載開始から10年ほどたった51巻(98年)。「90年代後半になり、社会の空気が変わった」という直感があった。

 作品初期には、アンケートで上位だったイメージ通りの「九州男児キャラ」も登場する。虹子の父だ。手際よく夕飯を用意する荒岩に驚き、そしてぼやく。「男は台所ばウロチョロせんと言われとったばってんがの。そんかわり女は育児炊事洗濯…家庭ばしっかり守るとが常識やったたい」

 午後8時に飲み会から帰宅した虹子に「いくら仕事とは言え、女が酔っぱらって帰ってくるとはなにごとかっ」と激怒。実際に女性読者からも手紙が届いた。「酔っぱらって旦那より遅く帰るなんて、ひどい」。「男は良くても女はだめ。女性でもそう考える人が多かった」と語る。

 そんな義父に、荒岩はしなやかに応対する。「お義父さんの時代はそれが一番お互いの力を出せたんですよ「今、わが家はそんな意味でこれが一番いい型なんです」

 昔ながらの家庭を否定せず、いろいろな形があっていい-。ずっと変わらない、うえやまさんのメッセージだ。作中でも「男性が料理すべきだ」とは表現しない。家事、育児のポジティブな部分や食卓を囲む幸せそうな様子から、自分の思いを伝えようとしてきた。

 うえやまさんに九州男児のイメージを聞くと「飯、風呂、寝るだけのタイプは滅びつつある。がんこだけど、会うと優しくてかあちゃんを大事にしている人かな」。“絶滅危惧種”のような九州男児の知人もいて、作品に苦言を呈されることもあるが「その家庭が良いなら、それで良い」と、うえやまさんと荒岩が重なってきた。

 家事、育児への不参加の要因については思うところがある。九州という地域性より、育ち方の方だ。家事の一切を母親が担う家庭で育ち、1人暮らしなどで自立する経験もないまま、結婚したとしたら…。「誰かがしてくれる、奥さんがしてくれて当然と思ってしまうのではないか」。高校生のころ、両親と一時離れて暮らしたことをきっかけに、家事をするようになった自身の経験がある。それは当然、九州に限ったことではないはずだ。

 作中で「九州男児」のワードを使ったことがないうえやまさんだが、「荒岩こそ九州男児なのかもしれない。そう、家事をする九州男児ね」。163巻まで続く長寿漫画となったクッキングパパは、今の時代の、九州男児を先取りしてきたのかもしれない。そんな新たな九州男児像が、定着する日は来るのだろうか。
(西日本新聞社提供)

リモートでのインタビューで作品ついて語るうえやまとちさん(西日本新聞社提供)
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