時計 2020/08/05 10:45

脱「居酒屋」 ワタミの和牛焼き肉食べ放題店の世界戦略とは 鹿児島の牛肉とタッグ、渡邉美樹会長自らプロデュースするワケ

和牛の世界進出構想を語る渡邉美樹氏=東京・大田区のワタミ本社
和牛の世界進出構想を語る渡邉美樹氏=東京・大田区のワタミ本社
 居酒屋チェーン大手のワタミ(東京)が、新業態となる和牛焼き肉食べ放題の「かみむら牧場」を東京、大阪に開店した。鹿児島市の食肉会社カミチクグループ(上村昌志代表)とタッグを組み、10年間で国内外に700店を展開し、グループの主力に育てる方針だ。新型コロナウイルスの影響で逆風の吹く外食業界で、どんな展望を描くのか。渡邉美樹会長(60)に聞いた。

 -コロナ前から脱「居酒屋」を掲げ、かみむら牧場を成長の柱に位置づけている。

 「居酒屋の市場は間違いなく縮む。若者は酒を飲まず、構造不況だ。テークアウト、デリバリー、ファミリー向けの3事業で新業態をつくろうと考えていた。参院議員時代に海外での和牛人気を知り、武器になると思った。仕入れ先が最重要だったが、ワタミの元社長(桑原豊氏)がカミチクの顧問になっていた縁で上村代表と出会い、素材に驚いた。何より6次産業化で農家を守り、和牛で世界進出という思いが一致した」

 -配膳に回転ずしの仕組みを取り入れた。

 「ハレの日に家族が和牛をおなかいっぱい食べるというのが店のコンセプトだ。だから無理のない価格(最高3980円)が大前提。アジアでは回転ずしが人気で、技術と素材の両方を持って行きたいと考え、自動で肉を運ぶ専用レーンは大手と提携した。この価格、品質、規模はワタミとカミチクが組んだからこそ。他ではやれない」

 -開店し、2カ月が過ぎた。

 「手応えは抜群だ。普通は徐々に人気が出るが、コロナ下でも1カ月で1店当たり3千万円を売り上げた。ただ利益は1%で、実質赤字。客が和牛を食べる割合が高く、原価に合わない。和牛以外の魅力的なメニュー開発など利益を生む仕組みを走りながら考える。大切なのはどういう世界(店)をつくりたいか。質も価格も変える気はない」

 -今後の展開は。

 「世界規模で問い合わせがある。年内に台湾、ベトナムに出店し、中国や米国でもパートナーが決まっている。コロナ収束後は一気に海外展開できる。店舗で肉も売る形にして、国内で1200億円、海外で3千億円の売り上げを目指す。今の夢はカミチクとオリジナルブランド牛をつくること。九州、鹿児島の牛を本気で売る。私の全面プロデュースは『和民』以来。店に上村代表の名をつけたのは本気の証しだ」

 -コロナで外食業界、特に居酒屋は落ち込みが激しい。

 「何となく立ち寄ることがなくなった。習慣は怖い。収束しても、居酒屋の市場は戻って8割だろう。新しい業態をつくるしかなく、進めていた転換を大きく前倒した。居酒屋は65店舗の閉店を決め、最終的には全体の3割に当たる150店舗を撤退する覚悟だ。一方、(宅配・持ち帰りの)唐揚げ店は既に100店舗の出店を決めた。コロナもいつかは終わる。居酒屋から他の部門に出向させて従業員の雇用を守り、将来的には焼き肉店で働いてもらう」

 -地方の飲食業に生き残り策のアドバイスを。

 「人口が減り、他から客を呼び込むしかない。ビジネスとしてやるなら、あの店のあれを食べに行こうという魅力が必要だ。チェーン店は素材や効率化、個人は技術で乗り越えるしかない。新しい価値を提供できないと生き残れない」

 〈わたなべ・みき〉 1959年、横浜市生まれ。明治大学商学部卒。84年ワタミの前身を設立した。2013年から参院議員を1期務め、19年経営に復帰した。ワタミ代表取締役会長兼グループCEO。オフィスに西郷隆盛の「敬天愛人」を掲げる。

 〈ワタミ〉 1984年創業。2000年東証1部上場。居酒屋「和民」「ミライザカ」など国内外に外食487店のほか、宅食営業所515店を展開する。グループ従業員約2600人。20年度のグループ売上高は909億円。