時計 2020/09/03 10:00

出水4歳女児死亡検証報告書 「関係機関の責任曖昧」 児相など連携不足、リスク判断の甘さ指摘

塩田康一知事に報告書を手渡す相談部会の長野純彦部会長(左から2人目)=2日、県庁
塩田康一知事に報告書を手渡す相談部会の長野純彦部会長(左から2人目)=2日、県庁
 ネグレクト(育児放棄)と虐待認定された出水市の大塚璃愛來(りあら)ちゃん=当時(4)=が、昨年8月末に死亡した事件を検証するために県が設置した社会福祉審議会児童福祉専門分科会相談部会は2日、報告書を塩田康一知事に提出した。児童相談所や自治体のリスク判断の甘さを指摘し「関係機関の責任の所在が曖昧。あらゆる部門や機関が連携する体制が必要だった」とした。

 報告書は、児相や自治体の体制不備のほか、警察との連携不足など12項目の課題を挙げた。再発防止策としては情報共有徹底など27項目を提案した。

 児相については「担当者が度々変わり適切な引き継ぎがなされなかった」と指摘。昨年5月から女児が死亡するまでの間、母子と接触しなかったことなどから「組織としてのチェック機能が働かなかった」と断じた。情報共有不足から一時保護につながらなかったとしルール化も求めた。

 璃愛來ちゃんを巡っては、薩摩川内市に住んでいた昨年3、4月、夜間一人で外にいるところを警察に4回保護されたことから県がネグレクトで虐待認定。同7月末に母子は出水市に転居した。同市は女児のあざを把握しながら警察や児相に報告しなかった。両市については危機意識の低さに言及。引き継ぎは「意識が共有されていたとは言いがたい」とした。

 相談部会の長野純彦部会長(県母子寡婦福祉連合会事務局長)は「二度と悲しい事案が起きないようお願いしたい」と語った。

 報告書を受け取った塩田知事は「指摘された連携強化や児相の配置見直しなどを検討し、速やかに取り組む」と述べた。

 相談部会は昨年9月30日に初会合があり、7回開催された。医師や弁護士ら5人で構成。児相や出水市など関係6機関ののべ58人に聞き取りをした。報告書はA4判47ページ。

 事件は鹿児島県警が昨年8月31日、璃愛來ちゃんの頭を拳で殴った暴行の疑いで、同居する母親の交際相手の男性(22)を逮捕し、発覚した。鹿児島地検は同年9月21日、男性を処分保留のまま釈放。死因は溺死疑い。起訴か不起訴かの判断は出ておらず、地検と県警は死亡との関連を含めて任意で捜査を続けている。

●鈍い対応、再発防止策急げ
〈解説〉出水市の女児死亡事件を巡り、県が設置した相談部会がまとめた検証報告書は、児童相談所や自治体、警察など関係機関の連携不足や業務体制の不備、危機意識の低さを指弾した。こうした不備が積み重なった結果、一人の幼い命を救えなかった事実を重く受け止め、教訓をいかに生かすかが問われる。

 報告書は、各機関の人手不足や職員の専門性の欠如なども指摘。事件の背景として、児相内や関係機関間の情報共有不足、責任の所在の曖昧さなども挙げた。改善が急がれる。

 事件から1年が経過したものの、虐待対応の改善の動きは鈍いと言わざるを得ない。出水市は連携の要となる要保護児童対策地域協議会の代表者、実務者会議をいまだに開催していない。県の指導力も求められる。

 7月には鹿児島市で1歳と3歳の姉妹が11日間自宅に置き去りにされる事件が起きた。報告書に示された再発防止の取り組みが急務だ。