海中に投げ出された甲板員、目の前に牛 「夢中でしがみついた」 奄美沖・貨物船遭難の生存者証言

(2020/09/09 09:10)
十島村小宝島付近で救助される貨物船「ガルフ ライブストック1」乗組員のフィリピン人男性(中央)=4日午後(第10管区海上保安本部提供)
十島村小宝島付近で救助される貨物船「ガルフ ライブストック1」乗組員のフィリピン人男性(中央)=4日午後(第10管区海上保安本部提供)
 奄美大島西の東シナ海でパナマ船籍の貨物船「ガルフ ライブストック1」(1万1947トン、外国人乗組員43人)が遭難した事故で、2人目の生存者のフィリピン人甲板員男性(30)が海中に投げ出された際、積み荷の牛にしがみついた後、近くの救命いかだに乗って救助を待っていたなどと説明していることが8日、第10管区海上保安本部への取材で分かった。

10管によると、船内の自室にいた男性は2日、エンジンの不調で船が停止したためライフジャケットを着るよう指示された。ライフジャケットを身に着け、乗組員2人とブリッジへ。その途中で波に飲み込まれた。それ以降、他の乗組員を見ていない。

 海面に浮かび上がった時、既に死んでいるとみられる牛が目に飛び込み、夢中でつかまった。約3分後、近くを漂っていた救命いかだに乗った。

 「北西方向の海上にオレンジ色のボートが見える」。4日午後3時ごろ、十島村役場小宝島出張所から118番があり、航空機や巡視船が現場に急行。一命を取り留めた。救助されるまで飲まず食わずだったが、命に別条はない。現在、奄美市の病院に入院中。「(海保の)飛行機を見て勇気づけられた」と話しているという。

 現場海域では8日までに、乗組員2人を救助し、1人の死亡を確認した。巡視船などが残り40人の乗組員の捜索を続けている。

 10管によると、貨物船は8月14日、牛約5800頭を積みニュージーランドを出港。9月4日、中国に着く予定だった。

 2日未明、奄美大島の西約185キロの海上で、海上保安庁が遭難信号を受信した。現場周辺海域は当時、台風9号の風速25メートル以上の暴風域に入っていたとみられる。
遭難した貨物船から流出したとみられる牛=3日午前10時10分、奄美大島の北西約127キロの海上(第10管区海上保安本部提供)
遭難した貨物船から流出したとみられる牛=3日午前10時10分、奄美大島の北西約127キロの海上(第10管区海上保安本部提供)
十島村・小宝島の北北西約2キロの海上で発見されたフィリピン人男性=4日午後(第10管区海上保安本部提供)
十島村・小宝島の北北西約2キロの海上で発見されたフィリピン人男性=4日午後(第10管区海上保安本部提供)