時計 2020/09/13 13:00

災害弱者の受け皿に 鹿児島県内ホテル避難 専門家「事前に情報、備え怠らず利用を」

台風10号ではホテルに避難する人が殺到した=5日、奄美市名瀬長浜町
台風10号ではホテルに避難する人が殺到した=5日、奄美市名瀬長浜町
 気象庁が「最大級の警戒」を呼び掛け、鹿児島県全域を暴風域に巻き込んだ台風10号では、新型コロナウイルスへの警戒から避難所を避けてホテルに身を寄せる人が殺到した。多くはトイレや移動に難儀する高齢者ら。ホテルが「災害弱者」の受け皿となった一方、停電や断水に見舞われる恐れもあり、専門家は災害への備えと、サービスをどこまで提供できるか事前の情報が必要と指摘する。

 鹿児島市のホテルユニオンは台風接近前から予約の電話が相次ぎ、最接近した6日は全43室が満室になった。宿泊費を補助する政府の「Go To トラベル」を約半数が利用し、単身の高齢者や家族連れが目立った。

 ホテル側は停電に備え小型発電機をレンタル。ガラス張りの入り口は布テープで補強し、チェックイン時は検温をした。淵村文一郎社長(61)は「コロナ下で個室は安心できると高齢者に感謝された。今後も災害時に利用してほしい」と話す。

 「3密」対策で避難所の定員を減らし、分散避難を呼び掛けている自治体にとってもホテル利用は渡りに船だった。鹿児島市は避難目的の宿泊に割り引きプランを設けることをホテルに提案。岩坪秀樹地域福祉課長は「空調のない避難所もあり、ホテル利用が進むのは好ましい」と歓迎する。

 一方、停電したホテルもあり、満室になっていた志布志市のホテルポラリス(73室)は夜間に空調などが一時使えなくなった。明け方までに復旧したため、大きな支障はなかったものの、支配人の春田敬伸さん(60)は「高齢者の熱中症を心配した」と話す。

 台風接近前は「フロアでもいいから泊めてほしい」との問い合わせも多かったが、宿泊は客室だけにした。春田さんは「客室以外は安全が確保できず、対応できるスタッフの数も限られる。今回の台風は多くの課題を投げ掛けた」と災害時の対応の難しさを語る。

 鹿児島大学の岩船昌起教授(災害地理学)は「コロナ対策で避難所の数は足りていない状況もあり、ホテル避難は今後も続く」とみる。その上で「ホテルなら安全で快適に過ごせると油断してはならない」と指摘する。

 ホテルには停電、断水、立地条件など災害リスクを想定した対策を求め、災害の状況によっては提供できるサービスが変わることを事前に利用者に伝えることを薦める。

 「場合によっては素泊まりのみのサービスになることも見越して、利用者は防災用具を持って行くなど備えを怠らないことが必要」と強調した。