時計 2020/10/18 13:00

7月豪雨被災の植物標本、鹿児島大学博物館が修復 1200点作業

アルコールと絵筆を使って植物標本を修復する田金秀一郎さん(左)ら=鹿児島市の鹿児島大学
アルコールと絵筆を使って植物標本を修復する田金秀一郎さん(左)ら=鹿児島市の鹿児島大学
 7月の九州豪雨で被害を受けた人吉城歴史館(熊本県人吉市)の収蔵する植物標本を、鹿児島大学総合研究博物館が修復を請け負い、15日までに依頼された1200点の修復をほぼ終えた。担当者は「標本を次代につなげる博物館の使命を果たしたい」と地道な作業を重ねてきた。

 全国の大学や博物館が連携して貴重な標本を復活させる取り組みの一環。同歴史館は7月4日、球磨川の氾濫で館内が1.5メートル浸水。同市で活躍した植物学者の前原勘次郎(1890~1975年)が集めた標本約3万3000点が泥水に漬かり、「クマガワブドウ」や「ヒトヨシテンナンショウ」など熊本南部の植生の貴重な標本も多数含まれていた。

 蒸し暑い夏場にカビが増殖し傷みが進む恐れがあったため、熊本県博物館ネットワークセンターが全国の博物館と大学に協力を依頼。鹿児島大学博物館など約40機関が修復することになった。

 鹿大に届いた標本は水害の生々しさを伝えるように泥の付いたまま。状態悪化を防ぐため一時冷凍保管した。東日本大震災で被災した植物標本の修復に参加した田金秀一郎特任助教(40)が中心となり、学生ボランティアの力を借りながら7月下旬から10月15日にかけて作業にあたってきた。

 14日はマメ科の標本67点を扱った。解凍後、標本に付いた泥を水などで取り除き、除菌するためアルコールを吹き付けながら、絵筆で慎重にカビや汚れを取り除く作業を繰り返した。その後、吸水用のダンボールに挟み、乾燥機で2日間かけて乾かすという。

 カビがひどく修復が難しいものが数点残っているが、他県の学芸員と相談しながら作業を進める考えだ。

 修復を終えた標本は、人吉城歴史館の再開時期が未定のため、収蔵環境が整ってから返却する。追加で修復の依頼があれば、標本を受け入れるという。田金特任助教は「開発で失われた植物もあり、どれも貴重な標本ばかり。少しでもきれいな状態で返したい」と話した。