時計 2020/10/18 15:00

選挙の「不要不急」に曖昧さ 緊急事態宣言中、「我慢の県民はどう思うか」を問う〈コロナと報道 ④〉

東京から国会議員が出席した後援会事務所開きやその反響を伝える紙面
東京から国会議員が出席した後援会事務所開きやその反響を伝える紙面
 県政担当というより一県民として抱いた疑問が、県民に波紋を広げる記事となった。

 知事選告示を1カ月半後に控えた5月9日、三反園訓知事(当時)の後援会事務所開きが鹿児島市であった。国が新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言を発令する中、東京から自民党国会議員2人が駆け付けた。

 三反園氏は前日、九州地方知事会のウェブ会議で「県境をまたぐ移動を抑える必要がある」と訴えたばかり。県のホームページにも「感染拡大防止は一人一人の行動にかかっている」とのメッセージを載せていた。

 「コロナ下で我慢を強いられている県民はどう感じるか」。そんな思いから、事務所開き後の囲み取材で、出席の意図を国会議員の1人と事務所開きの主催者である三反園氏に尋ねた。国会議員は「選挙は非常に大切で、党として推薦している立場」と淡々と答えた一方、三反園氏はコメントせず立ち去った。

 記事化するにはためらいもあった。国会議員が地元に帰って有権者の声を聞いたり、国政報告をしたりするのは大切な政治活動で、民主主義の根幹と言っていい。選挙も同じく民主主義の重要な手続きなのは間違いない。

 とはいえ、陣営内の行事である事務所開きを選挙活動と捉えていいのか。何をどこまで書くか同僚ともやり取りし、読者に是非を問うつもりで、直接見て、聞いた事実だけを書くと決めた。

 翌10日の紙面に記事が掲載されると、本社読者センターに電話やメールが相次いだ。「母が危篤なのにきょうだいに帰省を諦めさせた」「模範となる政治家の行動か」「一般市民と違い国会議員なら許されるのか」。寄せられた数十件の内容はどれも怒りに満ちていた。説明から逃げる三反園氏の姿が火に油を注いだ印象もある。

 緊急事態宣言中、国や県は「不要不急」の外出を控えるよう国民や県民に求めたが、その判断基準は各自に委ねた。どんな場合なら移動できるのか具体的説明もなく、結局、後で批判されるのを恐れてあれもこれもやめる。そんな状況が続くことへの不満が、事務所開きの記事を契機に噴出したようにみえた。

 後日、会見で三反園氏は配慮不足をわびた上で「政府が選挙は不要不急ではないとしている。(事務所開きは)その延長線上」と述べた。三反園氏や国会議員らが、県民の感情を読み違えていたのは否めない。

 記事化したことに後悔はない。ただ、民主主義を支える手続きを安易に「不要不急」のくくりに入れるわけにはいかないことも肝に銘じている。