時計 2020/11/24 17:00

コロナ感染対策と経済活動とのバランスどうとる 専門家「負の要素もっと認識を」「社会許容度の合意点見出せ」

「『無菌室を目指す』発想から脱却できれば、人に優しい社会になる」と話す森田洋之氏
「『無菌室を目指す』発想から脱却できれば、人に優しい社会になる」と話す森田洋之氏
 新型コロナウイルス下では感染対策と経済活動の両立が問われている。鹿児島市在住で医療経済ジャーナリストとして活動する森田洋之医師(49)に感染拡大リスクに対する考えを聞いた。

 -コロナの現状をどうみるか。

 「知見がそろいつつある今、初期のように過剰に恐れる必要はない。日本や韓国、台湾など東アジアでは、欧米やブラジルに比べ、人口当たりの死者数は圧倒的に少ない。多くの人は、BCGワクチンの効果などその理由に関心を持ちがちだが、経済学的には、このデータにこそ価値がある。つまり日本と欧米とではコロナ対策、特に経済政策に強弱の差があってもいいのではと考えられるからだ。経済の停滞や社会的な分断が生む負の要素をもっと認識すべきだ」

 -負の要素とは。

 「まずは自殺者の増加が深刻だ。警察庁がまとめた10月速報値は前年比の1.4倍に上った。経済的困窮や社会的つながりの希薄化が背景にある。特に育児を抱える20~30代の女性が心配だ。実家に帰るな、ママ友にも会うな-では、孤立は深まる。年代に限らず、社会的疎外感は心身不調の原因にもなる。コロナ感染は免れても結局、心身の健康を損なえば、元も子もない」

 -コロナは死亡者数に占める高齢者の割合が高い。

 「季節性インフルエンザでも毎年のように多くの方が亡くなり、同様に高齢者の割合が高い。悲しい事実だが、老衰で免疫力が低下しており、避けられない死もある。他方、コロナは医療環境の充実が進み、少なくとも日本では子どもや若者が次々と亡くなったり、重症化したりする状況にはない。経済とのバランスを考える上では、医学的議論にもまして、社会の許容度をどこに持っていくか合意点を見出すことが重要だ」

 -国内では「第3波」の様相を呈している。

 「マスコミ報道の影響もあるが、感染者数だけが独り歩きするのは好ましくない。検査対象を広げれば、数が増えるのは当たり前。より注視すべきは、死亡率や重症化率だ。対策の指針を決める政府・行政は、感染症の専門家の意見だけでなく、コロナ対策が生む正負の影響全体を見て意思決定してほしい。このまま対策強化だけが進めば、自殺や経済困窮が増え、社会の分断は深刻化する」
 -医療態勢の逼迫(ひっぱく)も課題だ。

 「感染拡大期、一部の医療従事者が激務を強いられたが、ほかの多くの病院では診療控えなどで逆に患者が減った。日本の医療は高いレベルにあるが、緊急時における態勢の転換ができておらずシステムとしてバランスが悪い。是正が必要だ」

 -コロナとの付き合い方は。

 「戦うという表現に違和感を感じる。ウイルスや細菌は常に我々の身近に存在しており、完全に死滅させることはできない。排除を強調するあまり、人との接触を断ち経済活動を止めるという発想に陥りやすい。『無菌室を目指す』発想から脱却できれば、感染者差別や中傷は減り、人に優しい社会になる」

【もりた・ひろゆき】 1971年、横浜市生まれ。日本内科学会認定内科医。一橋大学経済学部卒、宮崎医科大学を卒業後、北海道夕張市立診療所に勤務。同所長を経て、2013年から鹿児島市在住。診療と研究、執筆を中心に活動。南日本ヘルスリサーチラボ代表。近著は新型コロナウイルス下における医療問題を掘り下げた「日本の医療の不都合な真実」。