時計 2021/01/24 13:00

文豪・谷崎潤一郎は薩摩おごじょのファンだった 旧坊津町長に宛てた手紙に綴ったそのワケ

谷崎潤一郎や夫人が故長井正維さんへ宛てた手紙
谷崎潤一郎や夫人が故長井正維さんへ宛てた手紙
 作家の谷崎潤一郎と妻松子の手紙10通を南さつま市のNPOが保管している。旧坊津町長の長井正維さん=1979年死去=に宛てられたもので、町出身の使用人のあっせん依頼やそのお礼を伝える内容。谷崎は「台所太平記」で、坊津出身の女中の姿を生き生きと描いた。保管するNPO坊津やまびこ会の鮫島昭一理事長(72)は、文豪ゆかりの坊津のまち歩きに手紙を活用する考えだ。

 長井さんの遺族から8年ほど前に託された遺品の中にあった。昭和30年代のものとみられる。鮫島さんによると、これまでの使用人と違い、買い物のお釣りを1円も違わず返金した坊津出身の女性の律義さに、谷崎が感激。当時町長を務めていた長井さんに出身者を紹介するよう依頼したという。

 手紙は仲介に関するやり取りのほか、「女中さんのことにつきいろいろお世話になり」とのお礼も。盲腸になった使用人の実家に向けて松子夫人が「いい病院で診てもらうので心配しないように」とつづった手紙も残り、家に仕えた坊津の女性たちを敬う様子がうかがえる。

 町内には「台所太平記」の文学碑もある。鮫島さんは「作品と地元の縁が分かる貴重な資料。文学碑を訪ねるまち歩きで手紙を紹介したい。文豪の一面に触れてもらえるのでは」と話している。
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