時計 2021/02/22 09:30

感染公表どうする 悩む児童施設 「公益考え公開」「誹謗中傷懸念」… 新型コロナ・鹿児島 

職員が感染したことを伝える保護者宛てメールの文面(画像の一部を加工しています)
職員が感染したことを伝える保護者宛てメールの文面(画像の一部を加工しています)
 鹿児島県内の保育園や幼稚園などの児童施設が、子どもや職員の新型コロナウイルス感染を確認した際の、公表の有無や方法にばらつきが出ている。ホームページ(HP)に情報を掲示する施設もあれば、関係者連絡にとどめるケースも。専門家は「公開と情報共有が望ましいが、そのためには誹謗(ひぼう)中傷を防ぐ環境づくりが大事になる」と指摘する。

 鹿児島市の社会福祉法人落穂会は、運営する児童発達支援事業所や放課後デイサービスの3施設で1月末、職員3人と利用者4人の感染を確認。5回にわたりHPで感染状況を公表した。

 「事実と異なるうわさの一人歩きを防ぐことができた」。水流純大理事長は説明する。「感染拡大防止には個人が特定されない範囲で多くの人に知ってもらう必要がある。報道されるのもやむを得ない」。誹謗中傷の電話はなかったという。

■不公平感
 県内の保育園では1月、行政のHPを通じて感染者の状況とおわびを掲載した。施設は「住民に知らせ感染拡大を抑えるために公表した」と説明。ただ「地域外の人にまで知られればネガティブなイメージが広がる。園児や保護者に不安を与えるため報道はされたくなかった」とした。

 県や鹿児島市は事業者による公表内容や範囲について、公的な基準やマニュアルを作っておらず、事業者に任せているという。その一方で、県内の公立学校は感染を公表しておらず、“不公平感”を訴える声がある。

 市内の児童施設関係者は「黙っていれば心配は少ないが、公益のためにと公表した施設は誹謗中傷の不安が絶えない。現場からは理不尽との声が上がっている」と明かす。「公表を避ける風潮が強まれば感染拡大防止は危うい。公共性の高い施設は足並みをそろえてほしい」と訴える。

■保護者も揺れる
 保護者も揺れる。7月に職員1人の感染を確認した霧島市の児童施設。HPには掲載せず、保護者に一斉メールし自治会長らに限り連絡した。園児の母親(29)は「子どもが通う園で感染者が出たとは知られたくない気持ちがある」と語った。

 いちき串木野市で長男を幼稚園に通わせる女性(31)は「近くで感染者が出たとうわさを聞いても確認できなければ不安が増す」とし「公表してくれればコロナに向き合う姿勢の表れだと受け取れる。周囲の意識や対策も進むのでは」と話した。

 同志社大学法学部佐伯彰洋教授=行政法=は「感染拡大防止のため情報公開を進めるには、コロナの正しい知識と感染者を責めない心を一人一人持つことが肝要だ。行政はそのための啓発活動や、事業者が納得できる情報公開のガイドライン策定など主導的な動きが求められる」と強調した。