時計 2021/04/07 17:24

鹿児島の茶産出額・日本一でも喜べない 家庭の緑茶購入量、50年で半減 消費拡大へ機能性を科学的に証明

 鹿児島県の茶産出額(2019年)が静岡県を抜き、初めて日本一になった。食の洋風化などから緑茶を急須でいれて飲む家庭が減り、生産量自体は伸びておらず、快挙にも生産者は喜び半分といったところ。健康志向の高まりを踏まえ、古くから体に良いとされてきた緑茶の機能性を科学的に証明し、消費拡大につなげる取り組みが活発になっている。

 「トップに立ったとはいえもろ手を挙げて喜べない」。県茶生産協会の坂元修一郎会長(65)は、お茶王国・静岡を産出額で抜いたにもかかわらず、口調は重い。肝心の消費が振るわないからだ。

 全国茶生産団体連合会が総務省家計調査を基に1人当たりの緑茶購入量(ペットボトル入り飲料を除く)を算出したところ、19年は266グラムだった。下落傾向は50年に及び、1970年(527グラム)から半減した格好になる。

 消費低迷に加え、坂元会長は日中韓など15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の影響にも気をもむ。「安い中国茶が国内市場に大量に流入すれば、県産茶はさらに売れなくなる。中国茶の安値に引っ張られれば、もうからない」

 活路として衆目一致するのが機能性だ。代表的な品種が「べにふうき」で、花粉症の症状を軽減する効能があるとされるメチル化カテキンを多く含むことで知られる。

 JAかごしま茶業(鹿児島市)が6年前から販売する「べにふうき緑茶」ティーバッグ(21個入り、648円)は、年間約3万袋を売り上げる人気商品になっている。東洋昭品質管理課長(52)は「効能で商品を選ぶ消費行動は一層強まるのでは」と話し、新商品開発に意欲を示す。

 成分や効能を商品に記載できる「機能性表示食品制度」が15年4月にスタートしたことも追い風だ。県産茶の機能性表示商品を増やすため、県は21年度、生産者や茶商向けマニュアルの作成費を予算化し、消費喚起を後押しする。

 機能性を前面に出す戦略を巡っては明るい兆しがある。

 農林水産省が昨年秋に全国千人から回答を得た意識調査によると、新型コロナウイルス感染拡大以降、18~29歳の26%が茶葉からいれた緑茶(ティーバッグを含む)を飲む機会が増加。全世代の14%を大きく上回った。

 理由(複数回答)は家で過ごす時間が長くなったことが大きいが、3位に「健康機能性に魅力を感じた」(44%)が入った。カテキン類に抗ウイルス作用、テアニンにリラックス効果があるといわれ、コロナ禍で若者に健康への関心が高まったことがうかがえる。

 県茶生産協会は緑茶のさらなる可能性を見いだそうと、鹿児島大学と県農業開発総合センターに成分分析を依頼中。機能性を最大限に引き出す飲み方の研究に取り組む鹿大農学部の侯(こう)徳興(のりおき)教授(61)は「リーフ茶の購入や、企業による健康食品の開発が増え、茶の消費増のきっかけにしたい」と語る。

 枕崎に品種開発拠点

 機能性成分を多く含む茶の品種開発で生産者の期待を担うのが、農研機構の果樹茶業研究部門枕崎茶業研究拠点(枕崎市)だ。

 「べにふうき」をはじめ、赤ワインに含まれるアントシアニン(ポリフェノールの一種)が多く水色が赤い「サンルージュ」、アミノ酸が豊富で抹茶の原料にも適している「せいめい」など10品種がここで生まれた。

 温暖な気候を生かし、約8ヘクタールの茶畑で常時1万種以上を栽培。毎年、新たに約2000千種を導入し、20年かけて選抜する。品種登録されるのは1万~2万分の1という。

 同拠点の根角(ねすみ)厚司枕崎調整役(56)は「枕崎は全国の茶の育種の中心地。これからも多様化する消費者のニーズに対応できる品種を育てたい」と力を込める。
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