時計 2021/04/11 20:00

潜伏期間長いウイルス、水際で防ぐのは不可能では… 院内クラスター発生 鹿児島医療センター院長が実感したもの

「他の医療機関と経験を共有したい」と語る鹿児島医療センターの田中康博院長=鹿児島市の同センター
「他の医療機関と経験を共有したい」と語る鹿児島医療センターの田中康博院長=鹿児島市の同センター
 鹿児島県の救急医療の中核を担い、循環器分野で県内トップ級の実績を持つ鹿児島医療センター(鹿児島市)。2月12日、院内で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団、計35人)発生が確認され、医療関係者に激震が走った。23日以降、感染者は確認されず、3月26日に収束宣言が出された。田中康博院長(62)に経過や今後の課題など聞いた。

 -発生から診療全面再開までの1カ月超をどう振り返るか。

 「受け入れるはずだった患者や家族、医療関係者に対し申し訳ない気持ちだった。病院近くを通る救急車のサイレンが聞こえるたびに、いたたまれない気持ちになった」

 -2月10日に院内感染が確認された。

 「感染者が確認された病棟に対しPCR検査を実施したところ、入院患者10人と職員5人の陽性が確認されクラスターと判断した。11日午前には対策本部を立ち上げ、感染の恐れがある入院患者や職員らに対し、14日までに1306件のPCR検査をした。院内では21日までに職員12人、入院患者12人の計24人が陽性となった」

 -退院後に陽性が確認された患者がいた。

 「入院時にPCR検査を行ったときは陰性だったものの、退院後に発症するケースがあった。入院期間が短い急性期病床ということもあり、最大潜伏期間とされる14日間より短い入院となれば、感染しているか判断できないケースもある。患者は皆抵抗力が弱く、発熱する人は日常茶飯事。PCR検査の結果を過信しすぎ探知が遅れたことは反省しなければならない」

 -2月23日以後、感染者は出ていない。

 「診療は11日から休止し、3月8日に一部再開した。25日に厚生労働省クラスター班、県感染対策班、鹿児島市保健所に対し最終報告し了承してもらった。29日から診療を全面再開している」

 -クラスター下で医療従事者への新型コロナワクチンの先行接種も実施した。

 「国民にとって安全性を確かめる大切な研究になる。国立病院機構本部とも相談した上で、進めてよいと助言をもらった。院内の感染拡大を防ぐ効果も期待された。混乱は特になかった。これまで420人が接種し、重大な副反応は報告されていない」

 -クラスター発生以前の感染対策は。

 「入院時のPCR検査や検温といった水際対策はもちろん、入院患者へ対応する際の消毒徹底など、専門の資格を持つ医師、看護師らの指導の下で厳重な対策を行っていた。だが、クラスター発生を受け、発症2日前から感染力を持ち、潜伏期間の長いコロナを水際で防ぐことは不可能ではないかと実感した」

 -見えた課題は。

 「医療資源が潤沢とはいえない鹿児島にあって、救急医療を担う病院内で感染者が出た場合、救急体制を維持しつつ感染拡大をどう防ぐかが重要になる。感染管理と院内のDMAT(災害派遣医療チーム)を中心とした体制整備など業務継続への詳細な計画を今回作成した。他の医療機関と経験を共有する責務がある」