馬毛島基地計画 航空機の騒音評価に専門家から疑問の声 「最新知見で公正に評価を」

 2022/06/02 07:17
「タッチ・アンド・ゴー」を繰り返すFA18戦闘攻撃機=硫黄島(東京)
「タッチ・アンド・ゴー」を繰り返すFA18戦闘攻撃機=硫黄島(東京)
 西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地整備計画で、防衛省が4月20日に公告した環境影響評価(アセスメント)の準備書について、専門家から航空機騒音の評価に疑問の声が出ている。住民の反応などを小さく捉えていると懸念、種子島上空を飛ぶ場合の予測値などを丁寧に示すべきだと指摘する。

 防衛省は夕方や夜間の数値を大きく捉えて平均値化する指標で算出した。種子島島内外の計11地点で35.1~54.4デシベルと推定し、環境基準値(57デシベル)を下回るとした。単発的な最大騒音も予測し、中種子町浜津脇で77.5デシベルとしている。

 かつて防衛施設の騒音指標の見直しに携わった横浜国立大の田村明弘名誉教授(環境騒音)は、最新の調査分析を加味して騒音レベルを予測し直した。11地点で「49デシベル以下~59.6デシベル」相当とし、西之表市住吉と中種子町浜津脇は基準値を超え、3割以上の人が強い不快を感じると推定。「飛行ルートや高度、回数の再検討は不可避」とする意見書を同省に1日提出した。

 田村氏は「防衛省が採用した指標の根拠は50年前と変わらないが、軍用機に対する住民反応の科学的分析は2000年以降に大きく進んだ」と説明。「馬毛島の騒音評価は今後の防衛施設周辺の基準になる。最新の知見で公正に評価する必要がある」と強調した。

 沖縄などで騒音による健康影響を調べている北海道大の松井利仁教授は「欧州のように夜間の音に厳しい指標を採用しないと、健康を保護できない」。今回の予測でも「心疾患や睡眠障害などの影響は生じ得る」と危ぐする。

 世界保健機構(WHO)は健康を守るための指針を20年以上前に示し、国連環境計画も重要な環境因子に挙げる。松井氏は「日本は睡眠障害さえ認めず、世界の常識から遅れている」と見直しを訴える。

 鹿児島県のアセス専門委員を務める熊本大の矢野隆名誉教授(環境騒音)は、塩田康一知事が求めた種子島上空を飛んだ場合の予測値を防衛省が示さなかった点を指摘。「予測は容易にできる。『これだけのリスクがあるから、想定経路の外は絶対に飛行させない』と説明するのが誠実な態度だ」と話す。

 準備書には、主に夜間が想定される計器飛行の割合などが明示されていないとして「環境や健康を守る目的のため、より丁寧に情報開示する必要がある」と求めた。

 ■準備書の騒音評価

 戦闘機の音響データや飛行経路、回数などから予測する。夕方や夜間の数値を大きく捉えて平均値化している。防衛省はこれまで「うるささ指数(W値)」で評価していたが、より実態に近いとされ、国際的に主流の「時間帯補正等価レベル(Lden)」を初めて採用した。年間の総飛行回数は2万8817回、1日の回数は222回と設定した。