鹿児島の経済ニュース

 2021/09/25 20:50

ネオン消えても、人通り途絶えても にぎわい戻る日信じて街に立つ 繁華街・天文館の移動販売車 新型コロナ・鹿児島

常連客にパンを手渡す大久保美穂さん(左)=24日午後8時過ぎ、鹿児島市の天文館
常連客にパンを手渡す大久保美穂さん(左)=24日午後8時過ぎ、鹿児島市の天文館
 鹿児島県に新型コロナウイルス「まん延防止等重点措置」が適用されて1カ月余り。ネオンの消えた鹿児島市の天文館で、コロナ前と変わらず日曜と祝日を除く毎晩、移動販売車でパンを売る女性がいる。売り上げは激減していても「応援してくれる人がいる。にぎわいが戻る日を信じて待ち続けたい」と、24日夜も通りに立った。

 「あー誰も来ない。胃が痛くなってきた」。午後8時前、地蔵角交番近くのコインパーキングに止めた軽乗用車の横で、大久保美穂さん(46)はため息をついた。開け広げたトランクに、同市吉野町で仕入れたパンが暖色の照明を浴びて寂しげに並ぶ。開店から2時間近くが過ぎようとしていた。

 今の場所に車を出すようになって8年目。コロナ前はスナックに繰り出す男性がホステスに差し入れしようと訪れたり、天文館に泊まる観光やビジネス客が翌日の朝食用に買いに来たりした。日付が変わっても客足が途絶えず、一晩に300個近く売れた日もある。

 コロナ下で売り上げが落ち、重点措置期間中は客が2、3時間来ないのも当たり前。通りは空き店舗が目立つようになり、廃業のあいさつに来る飲食店関係者もいる。「もう街がにぎわうことはないのかも」と心細くなり、熟睡できない夜も増えた、と打ち明けた。

 その時だった。「お疲れさま、これ差し入れだよ」。常連という50代の男性が唐揚げの入った袋を大久保さんに手渡し、家族への土産にパンをいくつか購入した。男性は「こんな状況なのに、変わらずに店を出す姿にいつも元気をもらっている」とほほ笑んだ。

 この日は第三者認証を受けた飲食店の酒類提供が午後7時半まで可能になった初日。午後8時を過ぎると、ぽつぽつと客が訪れ、閉店する午前0時までに十数人が買い求めた。

 「心が折れそうになる日々だけど、いつも誰かが支えてくれる」と大久保さん。「我慢すればきっといい日が来る」と夜空を見上げた。
広告
広告