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【翔べ和牛 王国の礎④】京都に愛され急成長 「一緒に育ててきた同志」 鹿児島牛 「販売協力会」が買い支え

 2022/01/16 12:30
京都市中央食肉市場で鹿児島産和牛の枝肉をチェックする仕入れ業者=2021年11月
京都市中央食肉市場で鹿児島産和牛の枝肉をチェックする仕入れ業者=2021年11月
 京都市中心部の四条通にある「モリタ屋四条猪熊本店」は、すき焼きを看板メニューにする。昨年末に訪ねると、約100席の店内は忘年会の客らでほぼ満杯だった。鹿児島産の霜降り肉スライスが次々と皿に盛りつけられ、運ばれていく。

 モリタ屋は京都市を中心に飲食店、食品スーパーを計11店舗展開する。年間に千数百頭分の和牛肉を仕入れ、主力は鹿児島と長野産。社長の吉岡浩人さん(62)は「鹿児島ほど重宝する産地は他にない」と話す。

 この道37年のプロの目から見ても「品質は申し分ない」。さらに、必要量を安定して調達できる供給網はありがたい。

 子牛生産だけでなく、鹿児島は肥育牛の頭数も国内最多。大量仕入れで割安に入手できる点も魅力だ。

■援軍

 京都は明治の昔から牛肉好きで知られる。都道府県庁所在地別の消費額は、同じ食文化圏の大津や奈良と1、2位を争う。

 鹿児島にとっては恩人ともいえる存在である。1974年、仕入れ業者の有志が「販売協力会」をつくり、無名だった県産牛を買い支えてくれた。全国でも例のない取り組みだった。

 戦後、和牛に本腰を入れた鹿児島は、産地としては後発組。飼養頭数が多く、将来性に期待していたようだ。

 「父は『実直で勉強熱心な農家が多い』と評価していた」。京都府木津川市で120年続く老舗精肉店「笠庄(かさしょう)」の社長、笠置庄太郎さん(47)は明かす。

 父の義次さんは10年前に亡くなるまで、販売協力会の会長を30年近く務めた。買い支えに反発する同業者もいたが、「必ず京都を支える産地になる」と譲らず、未熟だった飼養技術の向上にも力を尽くした。

 大消費地の京都という援軍を得た鹿児島は、市場ニーズに合った和牛づくりを進め、肥育の腕を磨く。全国のバイヤーの評価も高まり、質・量を兼ね備えた産地として地位を確立。日本中の胃袋を満たす「和牛王国」へと成長していく。

 肥育牛飼養頭数は約15万頭(昨年2月時点)と、この20年で倍増した。2位の宮崎に6万頭の差をつけ、追随を許さない。

■固い絆

 京都との絆は今なお固い。JA鹿児島県経済連は毎月100頭前後を京都市中央食肉市場に出荷し、会長自らが年1回出向いて販売協力会に謝意を伝える。

 昨年11月下旬、競りの様子をのぞいた。「465番からは鹿児島県経済連」。競り人のかけ声を合図に、番号札を付けた県産枝肉が競り場に運び込まれる。

 笠庄の笠置さんはこの日、いちき串木野市の冨永孝一さん(77)の肉を落札した。亡父が年に何度も足を運び、和牛づくりについて語り合った一人だ。

 店で牛肉は鹿児島産しか販売しない。「農家の顔が見えるから安心して買える。何より一緒にブランドを育ててきた同志という意識が私たちにはあるんだ」。笠置さんはそう言って目を細めた。
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