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飼料が、肥料が…急激な価格高騰に農家はピンチ 公約「強い農業」実現の本気度は?【参院選 論点を問う】

 2022/07/04 11:00
飼っている黒豚に餌をやる川﨑高義さん=6月30日、南九州市(川﨑さん提供)
飼っている黒豚に餌をやる川﨑高義さん=6月30日、南九州市(川﨑さん提供)
 国内農業がピンチに陥っている。生産に欠かせない資材の確保が難しくなっているためだ。

 「黒豚を育てて40年以上になるが、ここまで急激に飼料価格が上がった経験はない。先行きも見えず、経営の見通しが立てられないのがつらい」。南九州市の養豚農家、川﨑高義さん(77)は苦しい胸の内を明かす。生産費の大半を占める飼料代はわずか1年で3割上昇した。

 新たな母豚導入もままならないが、高齢になれば産子数は減っていく傾向があり、生産効率は落ちる。コスト上昇が収入減を招く悪循環に陥っており、「とにかく経営を維持するだけで精いっぱいだ」とため息をつく。

 園芸農家には、肥料代の高騰が重くのしかかる。ホウレンソウやミズナ、シュンギクなどを栽培する仮屋幸孝さん(57)=鹿児島市=は「7月に入ってカリウム肥料の値段が一気に1.6倍になった。据え置きを見込んでいた窒素肥料も4割近く上がり、途方に暮れている」。

 軟弱野菜の価格はここ数年、安値安定の傾向にあり、高騰分は農家がかぶるしかない。土の状態を分析して使用量を抑える努力は続けているものの、「値上がり幅が大きすぎて追いつかない」のが現状だ。

 飼料や肥料の高騰の背景には、世界人口の増加に伴う穀物需要拡大がある。特に中国は養豚業の企業化・大規模化を進めており、飼料用トウモロコシの大量買い付けや自国産肥料原料の輸出抑制を実施。国際相場が急騰する一因となっている。

 さらに流れを加速させたのが、ロシアによるウクライナ侵攻だ。ロシアは世界有数の穀物輸出国であると同時に、肥料原料となるカリウムの産出量でも上位を占める。経済制裁下にあるロシア発の物流は停滞。円安の進行や原油高もあり、今後もすぐに価格が下落に転じるとは考えにくい。

 JA県経済連肥料農薬課の清水洋之課長(49)は「以前にも一時的に肥料原料が高騰したことはあったが、まだ『お金を出せば買える』状況だった。今は物品へのアクセス自体が難しくなっている」と危機感を募らす。調達先を中国からモロッコに変えざるを得なくなり、輸送コストが大幅に上がった原料もあるという。

 今回の飼料・肥料高騰は、その原料を海外に依存してきた国内農業の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。川﨑さん、仮屋さんは「今のままでは高齢化が進み、産地は細る。若い人たちが『農業をやってみよう』と思えるような環境を整えてほしい」と口をそろえる。

 20年以上にわたって4割前後で推移する食料自給率を引き上げるためにも、国際情勢に左右されない生産基盤づくりは急務だ。農家が再生産できる仕組みづくりも欠かせない。

 主要各党は自給率向上をはじめ「強い農業」の実現を公約に掲げる。国際情勢が混迷する中、国民の「食」をどう守るのか。食料の安定確保に向けた政治の本気度が問われている。