息子も陽性。「母ちゃんと同じ」と言うと、抱きついてきた。空港には自衛隊ヘリが待っていた。ごう音が響く。隔離生活への不安で鳥肌が立った〈コロナの爪痕②〉
2021/05/13 15:58

息子と手をつなぎ海岸を歩く女性=与論町
一夜明けた7月23日午前6時45分、いつもの町内放送で目が覚めた。体温は36.3度。前日処方された解熱鎮痛剤が効いたようだ。息子も元気でほっとした。8時半、息子のPCR検査のため車で病院に向かった。検査はインフルエンザと似ていて、割り箸2本分ほどの長さの棒を鼻の奥に突っ込む。息子はその痛みを思い出し、怖がって泣いていた。
病院に到着すると、既に多くの人が検査を待っていた。私の濃厚接触者である友人夫婦や同僚もいて、申し訳なさと人の目が気になる恐怖で生きた心地がしなかった。この気持ちを胸にこれから生き続けることになるかもしれない、と思うと体が震えた。
■検査を怖がる
感染者の私は付き添いができず、車から見守った。息子は1人で、泣きながら臨時に設置された検査場に向かった。友人夫婦が息子を前後にはさんで並んでくれた。だが、息子は検査を怖がって会場の隅っこに座り込む。夫婦は懸命になだめてくれた。私のせいで濃厚接触者になり、つらい思いをさせたにもかかわらず、息子のことを気に掛けてくれる。申し訳なさとありがたさで涙が出た。
検査を終え、夫婦が「私たちと○○ちゃん(息子)が陰性だったら、○○ちゃんは預かるから心配しないで」と声を掛けてくれた。県本土からこの島に移り住んで6年近くがたつ。島民の情の深さや心の広さに触れてきたが、改めて与論に住んでよかったと心から思えた。後で夫婦は陰性だったと分かり、こんなにうれしいことはなかった。
自宅に戻ると、県の担当者から「奄美大島へ搬送することになります」と連絡が入った。「息子はどうなりますか」と聞くと「両親が陽性で、子どもは陰性だったが一緒に施設に入ったケースがあります。安心してください」と教えてくれた。親身になって調べ、対応してくれた。
■一緒に泣いた
午後11時4分、保健所から息子の検査結果が伝えられる。陽性だった。胸が締め付けられる。電話を終えると、寝たはずの息子が起きてきた。
何と伝えればいいのか。「今日からまた一緒に寝ようか」と話しかけたが、息子は理解できず、口を押さえて「コロナになっちゃうからだめだよ」と返された。改めて「あなたも母ちゃんと同じだったみたい。2人でゆっくり治そうね」と話すと状況が理解できたようだ。泣きながら抱きついてきた。一緒に泣いた。
眠れない夜を過ごした。24日午後1時50分、搬送のため迎えの車が来た。空港には自衛隊ヘリが機体後部を開けて待っていた。頼もしく感じると同時に、耳栓をしても体に響くヘリのごう音が隔離生活への不安をかき立て、鳥肌が立った。
(2020年10月21日付)
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