「全員で誠意を尽くして対応させて頂きます」。病室には手書きの手紙と小さな折り鶴。優しい文字に胸がいっぱいになり、隔離生活を覚悟した〈コロナの爪痕③〉
2021/05/13 16:44

感染者を奄美市に搬送するため待機する自衛隊ヘリ=与論町立長の与論空港

女性の病室に置いてあった病院からの手紙と折り鶴(画像は一部加工しています)
7月24日午後2時すぎに、自衛隊のヘリが奄美大島へ飛び立った。搭乗者は私たち親子以外に年齢の近い友人と車いすの高齢者ら8人。会話はなく、重苦しい雰囲気が漂う。機内は大きな音と振動が響き、まるでブルドーザーに乗っているようだった。
ヘリは1時間もしないうちに着陸した。迎えの小型バスに乗せられ病院へ向かった。外から見られるのが怖くてうつむいた。
到着すると、防護服を着たスタッフに裏口から病棟へ誘導された。病棟は感染者のために1フロアを全て空けてあった。病室は息子と一緒で、ベッドが二つあった。院長名で「全員で誠意を尽くして対応させて頂きます」と手書きされた手紙と小さな折り鶴が置かれていた。優しさのこもった文字に胸がいっぱいになった。「隔離生活が始まるんだ」と覚悟した。
■母親が見舞いに
症状が出てから目まぐるしく過ぎた2日間と比べて、入院中は穏やかな日々が続く。私は嗅覚障害以外の症状は治まり、息子は無症状のまま、共に投薬や治療はなかった。
入院3日目には息子が「食べたい」と言っていたハンバーガーや菓子、おもちゃなどを持って、県本土から母親が来てくれた。直接は会えなかった。心配をかけた上に遠方から来てくれたことに、ありがたさと申し訳なさが入り交じる。
駐車場に向かう母親が見えたので、病室から手を振った。半年ぶりに見る母は小さく見えた。後から「いろいろ悪い方に考えないように、とにかくゆっくり過ごしてね」と連絡が来た。
医療従事者は防護服に全身を包んでいたため顔は見えなかった。息子のことをいつも気にかけ、病院食にふりかけや果物をつけてくれた。毎日のように菓子の差し入れもあった。感謝しかない。
■花火が上がる
退院は8月2日に決まった。1日夜は病院の近くでコロナ収束を願う花火が打ち上げられた。数十分かけて千発ぐらいだろうか。病室の窓から見た。息子は食い入るように見ていた。まるで、私たちの退院祝いのよう。忘れられない思い出になった。
同時に、これから日常生活に戻ることへの不安が芽生える。
10日間の入院生活を終え、県本土の実家に3泊した。両親は笑顔で「お帰り。元気そうでよかった」と出迎えた。いつも通り、息子の頭をなで一緒に風呂に入ってくれた。
職場とも連絡を取り、復帰は6日に決まった。友人や同僚は「待ってるよ」「また遊ぼうね」と激励のメッセージを送ってくれた。うれしかった。だが、私のせいで感染者や濃厚接触者にしてしまった約10人の友人や同僚が島にいる、と思うと罪悪感が頭をもたげた。
(2020年10月22日付)
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