「立候補の前に産む方が先だ」 土足で踏み込む〝産め圧力〟 酒席では「コンパニオン代わり」 お茶くみも…
2021/06/08 21:00
最近まで女性議員が同僚にお茶くみをする慣習があった議会もある(写真と記事は関係ありません)
4月、さつま町議会議員に初当選した有川美子さん(49)は選挙期間中、80代の男性有権者に突然説教され、驚いた。「立候補する前に子どもを産む方が先だ」。街頭での演説後、遠くで聞いていた男性にあいさつに行き、政策に関する話をしたところ遮られた。
町内で進む少子高齢化を背景に、「子どもが増えれば」との思いから出た発言だったのかもしれない。だが結婚や出産というプライベートな事柄に土足で踏み込み、女性の生き方を強要する言葉に思わず耳を疑った。
「今は多様性が尊重される時代。女性は結婚して子どもを産むのが当然と決めつけ、他人から『産めないのか』と言われるのはおかしい」と指摘する。
■恥さらしと言われ
独身でいることや離婚歴があることへの非難、「子どもを産んでいるなら応援するのに」といった声。南日本新聞が県内全ての女性議員77人(2月時点で議員だった元職を含む)に行ったアンケートでも、女性の人権を踏みにじるような発言に傷ついたという訴えが多かった。
性別による固定的な役割分担意識が依然として根強い現状も浮き彫りになった。女性議員が男性議員にお茶を入れる慣習がつい最近まで残っていた議会があった。家族から「女性が選挙に出るのは恥さらし」と心ない言葉を掛けられたとの回答も寄せられた。
ある議員は会合であいさつ回りをした際、「コンパニオンの代わり」と言われた。「酒席にいる女性というだけでコンパニオンに結びつけるのは、『女性は男性をもてなす存在』という固定観念がいまだにあるからだ」と憤る。
「家事や子育て、介護などを全て女性が任され、負担が偏る」との声も多数届いた。2児を育てる議員は「睡眠時間を削ったら体調を崩した。仕事と家庭の両立には周囲のサポートが不可欠」と切実だ。
政治分野での男女共同参画推進に必要な取り組みを選択式で三つまで尋ねた。その結果、「ジェンダーバイアス(性に基づく差別や偏見)をなくすための教育」「議員活動と育児などの両立支援」「家族の理解」が、いずれも半数を超える40人以上から選ばれた。
■多様な視点
「幼い子どもがいるのに抱っこして議会に参加するつもりか」。霧島市で8年前、女性の有権者が子育て中の女性議員を誹謗(ひぼう)中傷し、吹聴するトラブルが起きた。この話を聞いた同僚の男性議員が、渦中の平原志保議員(49)の耳に入れた。
平原議員は当時、未就学児と小学生を育てながら活動していた。子育て世代の声を政策に反映させようと、育児と家事に奮闘する中での出来事だった。「おんぶしてやるので大丈夫です」と女性有権者に返したものの、とても不愉快だったと振り返る。「政治には多様な視点が必要。幼い子どもがいる母親が議員になり、生の声を届けてはいけないのだろうか」
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