2021/07/25 06:15

【ルポ・聖火は見えたか】会場内にも聞こえた「今すぐやめろ」、空虚に響いた「連帯」

開会式の会場近くで「五輪中止」の声を上げるデモ隊=23日午後10時33分ごろ、東京都の国立競技場周辺
開会式の会場近くで「五輪中止」の声を上げるデモ隊=23日午後10時33分ごろ、東京都の国立競技場周辺
 手を振りながら入場行進する選手たちには笑顔があふれた。だが、その先に観客はいない。国立競技場の外は賛否の声が渦巻き、異様な熱気。会場内で繰り返された「連帯」の呼び掛けは、どこか空虚に響いた。

 無観客とはいえ、集まったメディア関係者は約3500人。さすがに高揚感がある。工夫を凝らした演出とパフォーマンスには心を奪われた。肌に感じた打ち上げ花火の熱は、17日間の戦いの熱さを物語っていたように思う。

 日本が誇るゲーム音楽に乗せ、アスリートたちが登場した。それなりに拍手と歓声が起こる。だが、プログラムの間には静寂が訪れる。聞こえるのは外のざわめき。通路に出ると「五輪中止」「今すぐやめろ」という声がはっきり聞こえる。

 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、長いあいさつで「連帯」という言葉を何度も使った。だが、コロナと五輪に翻弄(ほんろう)され分断された国民の心に、その言葉は届きそうにない。

 選手たちの晴れやかな表情が救いになった。平和の祭典の主役たちが、もやもやを一掃してくれると信じたい。(鶴)

■賛否両派が「密」を形成

 開会式の数時間前、国立競技場周辺はすでに多くの人が集まっていた。外から演出を見ようと歩き回る人々。JR千駄ケ谷駅前では「五輪反対」の男性と賛成の男性が、歩道を挟んで持論を主張し合っていた。

 開幕の花火が上がる午後8時には明らかな“密”になった。数百人のデモ隊が拡声器で「五輪やめろ」と叫び、警察が規制する。

 時折怒号が飛ぶ中、若者がスマホ越しに華々しい「会場内」を見つめ、海外メディアがそれを写す。異様な熱気だが、祝祭の雰囲気とは明らかに違う。車いすで1時間かけて来たという会社員男性(28)は「想像と違う」と苦笑した。

 店先のテレビには昭和のような人だかりがあった。五輪が人々を引きつけるのも、また確かなのだろう。

 午前0時。近くの繁華街・赤坂には警察官以外の人影は見えない。タクシー運転手は「恩恵は何もない」とため息をついた。「聖火」の意味を考えながら、帰路についた。(常・西)
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