2021/07/28 11:00

就任1年の塩田・鹿児島県知事 コロナ対応で連携不足、足並み乱れる〈検証 塩田県政1年㊤〉

鹿児島県庁
鹿児島県庁
 経済産業省出身の塩田康一氏(55)が、鹿児島県知事に就任して28日で1年を迎えた。感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス下でのかじ取りと、開かれた県政運営に向けた取り組みを検証する。

 6月上旬、県庁5階の知事室。「どうして、もっと早く一斉に発送しないのか」。塩田知事は、ワクチンの接種券を巡る鹿児島市の対応に、もどかしさをにじませた。

 接種は原則、市町村が実施主体だ。券には住民1人ずつに番号が振ってあり、届いていれば対象年齢を拡大しても対応しやすい。ところが、対象者が最多の鹿児島市は、64歳以下について年齢層ごとの段階的な発送を発表した。市町村の業務に、どこまで踏み込んでよいのか。知事は距離感をつかめずにいた。

 「県と鹿児島市の関係改善は長年の課題」と指摘する関係者は少なくない。新総合体育館、サッカースタジアム、市電延伸など懸案は多く、いずれも膠着(こうちゃく)状態が続く。

 そんな中、ともにラ・サール中高、東京大卒で、昨年の選挙戦で自民推薦候補を破った塩田氏が知事に、県議出身の下鶴隆央氏(41)が市長に就任。しがらみのない両氏に関係改善への期待が膨らんだが、新型コロナは連携の難しさを改めて浮き彫りにした。

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 県が鹿児島市と鹿屋市で実施している大規模接種について、塩田知事は当初、態度を明確に示さなかった。5月の定例会見で「現時点で県独自の開設予定はない」と言及。市町村任せにも映る姿勢に、県議会から異論が相次ぎ、8日後に県主体の接種を表明した。

 対象年齢を拡大し、接種券が届いていない18~64歳以下でも申し込める大規模接種の特設サイトを開設。1日8万件を想定していたところ、開始1時間で60万件のアクセスが集中し、回線はパンク。予約が取れない県民は困惑し、知事が陳謝する事態となった。

 吉留厚宏副議長(59)は「未曽有の事態。走りながらの対応で多少の混乱は致し方ない」と一定の理解を示す。他方、ある自民県議は「対応が後手後手だ。行政の垣根を越えて、もっと県民に寄り添う姿勢が大切」と注文を付ける。

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 医療現場の最前線に立つ県医師会との足並みも一部乱れた。県は5月から感染拡大地域の飲食店に要請していた営業時間短縮について、感染状況を踏まえ鹿児島市は6月上旬で解除する方針をいったん固めた。しかし、関係機関に根回しを始めた段階で、再拡大を懸念する医師会から「待った」がかかり、最終的に市の再延長へ方針転換した。

 「われわれは現場の肌感覚を伝えている」と県医師会の池田琢哉会長(74)。「感染防止対策を重視しすぎると、経済活動が抑えられてしまう。バランスを取るため知事もジレンマを抱えているだろう」とおもんぱかる。

 新型コロナは夏休みに入り、感染再拡大の様相を見せる。これまで以上にきっちりとした対応が欠かせない。ある関係者は「知事自らが当事者から話を聞き、総合的な方向性を示すべきだ。戦略やリーダーシップがより重要になる」と訴えた。
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