2021/07/29 11:00

賛否割れる鹿児島の重要課題 「総合的な判断」はいつ示されるのか〈検証 塩田県政1年㊥〉

西之表市馬毛島への米軍機訓練移転を巡り、5月の自衛隊機デモ飛行を同市で視察する塩田康一知事
西之表市馬毛島への米軍機訓練移転を巡り、5月の自衛隊機デモ飛行を同市で視察する塩田康一知事
 「住民に怒りと苦悩を与える原因をつくったのはボーリング調査を強行した防衛省と、それを簡単に許した塩田知事、あなたです」

 鹿児島県議会3月定例会の一般質問。西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地建設計画について、共産党の平良行雄議員(61)が語気を強め、塩田康一知事(55)に即刻中止を求めた。

 調査は、基地建設の是非が争点となった西之表市長選の約1カ月前に始まった。塩田知事は「手続きに従って適切に対応している」と答弁するにとどめた。

 平良県議は「民意が出るまで、整備に向けたボーリング調査開始の猶予を求めるべきだった。簡単に許可したことで、基地化のテンポが速まり、反対派と誘致派に島を二分した」と今も収まらない。

 塩田知事は5月、訓練移転に伴う音の程度を住民に示す自衛隊機のデモ飛行を西之表市で視察。地元首長と面会して意見交換を重ねているが、騒音の所感や基地計画への県の考えは示していない。

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 2020年8月、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に、北海道寿都(すっつ)町が応募を検討していることが明らかになった。

 核のごみを巡り、鹿児島県内では過去に複数の誘致話が持ち上がっては立ち消えになった経緯がある。12市町村が持ち込みなどの拒否条例を制定しており、塩田知事の反応は早かった。すぐに「県内に最終処分場を造る気持ちはない」と明言。受け入れや誘致に反対する姿勢を示した。

 これまで知事は「県民の声が反映される県政に」と繰り返し述べてきた。昨年10月の定例会見で県民の声をどのように判断するのかと問われ、「割れているのは全体の51対49なのか、60対40なのか。賛成、反対の理由について科学的、技術的な評価など、いろいろなことを総合的に判断したい」と語った。

 就任1年目に、賛否が割れる県政の重要課題について「総合的な判断」を示す場面は、ほとんど見られなかった。九州電力川内原発の運転延長問題も、慎重な姿勢を維持している。県は「判断材料が出そろっていない」との説明を繰り返し、知事自身の姿勢は伝わってこない。

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 原発政策に批判的な学識経験者を、県の専門委員会に加えることを公約に掲げたものの、「時期は九電の動向次第」として実現しないままだ。

 川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(72)は「公約に掲げたのだから早く加えてほしい。このままでは安全性を議論する時間が十分確保できない」と“時間切れ”を懸念する。一方、推進派の上村健一川内商工会議所専務理事(67)は「国のエネルギー政策に携わる経済産業省出身者なので、いずれ(運転20年延長という)大きな決断をしてくれるはず」と期待しながらも、慎重姿勢を崩さない塩田知事について「現段階で評価する材料はない」とみる。

 県民連合の柳誠子県議(60)は「知事選では『前でもない、今でもない』と訴えて当選した。知事になって一体、何をしたいのかがいまだに見えない」と苦言を呈した。
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