2021/09/02 21:15

「台湾有事なら沖縄・鹿児島も戦域に。これは軍事的常識」 河野前統幕長 対中抑止へ「正面切って議論を」

インタビューに応じる河野克俊前統幕長=東京都内
インタビューに応じる河野克俊前統幕長=東京都内
 8月31日に閣議決定された2022年度予算概算要求で、防衛省は引き続き南西諸島の防衛力強化を前面に打ち出した。鹿児島にとって何を意味するのか。制服組トップを務めた河野克俊前統合幕僚長(66)に話を聞いた。

 -現在の安全保障情勢をどう見るか。
 「好むと好まざるとに関わらず、台湾情勢が世界の安保の最前線だ。アフガニスタンの駐留米軍撤退や欧州各国の(東アジア地域への)空母派遣も、中国が一番の脅威と捉えた動きの一環。台湾と与那国島(沖縄)は110キロしか離れておらず、日本は第三者でいられない。有事になれば沖縄、奄美も戦域になるのは軍事的に常識。そうならないための議論が必要だ」

 -台湾侵攻は起こりうるか。
 「中国にとって台湾統一は悲願。今は軍事的にも優位で中国の意思ひとつだ。習近平総書記が来年、異例の3期目に入る際、大義名分とする可能性がある」

 「本格的な上陸、台湾の離島への侵攻、サイバー攻撃や国内かく乱を合わせた侵攻。いずれの危機も考えなければならない。事態の段階によって安保法制に基づき自衛隊も動く。戦争のことは議論さえしてはいけないとの風潮は思考停止だ」

 -止めるにはどうすればいいか。
 「平和的な外交解決が何よりも大前提。だが中国が優位な現状を自ら変える理由はない。台湾に手を出せば代償が大きいと分からせなければ。そのために日本の防衛力強化が必要だ」

 「米は中距離核戦力(INF)全廃条約で地上発射型の中距離弾道ミサイルを持っていないのに対し、中国は約1250発を保有するとされる。ギャップが大きい。米軍はアジア配備を目指しており、早晩日本にも相談が来る」

 -具体的な手だては。
 「日本にミサイルを配備すれば、環境が逆転する。日米が中国を射程に入れる一方、中国のものは米本土に届かない。中国は非常に厄介だろう。冷戦時代のINF全廃も、旧ソ連に対抗した欧米がミサイルを配備して初めて議論になった歴史がある。抑止力は戦術的にも、戦略的にも必要だ」

 「日本では既に部隊が配備されている宮古島、奄美(瀬戸内)に、(相手の射程圏外から攻撃できる)『スタンド・オフ・ミサイル』として開発中の地対艦ミサイルを置くのが自然な流れ。敵基地攻撃能力の保有は大きな反発も予想されるが、正面を切って議論する時だ」

 -西之表市馬毛島にも基地計画がある。
 「現役時代に馬毛島の基地を対中戦略で考えたことはない。米空母の運用に必要な訓練施設として、三宅島(東京)や瀬戸内海の候補地を経て、やっとたどり着いた場所だ。原点はあくまで米軍の訓練施設。対中戦略とは別に考えた方が分かりやすい。ただ自衛隊にとって陸海空で訓練に使える場所は少なく、メリットは大きい。日米同盟、抑止力に大きく寄与するのも間違いない」
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