「ブレークスルー」を初公表 情報公開は新型コロナと闘うために〈デルタ株クラスター 鹿児島市・米盛病院報告書より〉

 2021/09/04 09:00
感染者のケアにあたる医療従事者=鹿児島市の米盛病院(同院提供。画像の一部を加工しています)
感染者のケアにあたる医療従事者=鹿児島市の米盛病院(同院提供。画像の一部を加工しています)
 鹿児島市の米盛病院で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)により、県内で初めて具体的に実証されたことが二つある。感染力の強いデルタ株の猛威と、ワクチン2回接種後にも感染する「ブレークスルー感染」だ。

 県はデルタ株のスクリーニング検査の陽性率が9割を超えていることを公表している。県内で確認される最近のクラスターは、デルタ株によるものと考えられるが、発表時点では検査結果が出ておらず、後日公表されることもない。一方、ワクチン接種完了後の感染が県内で十数例あると県は発表しているが、どこで起きたかは明らかにしていない。

 こうした状況下で、米盛病院はクラスターがデルタ株によるものだったことや、ワクチン接種完了後の感染があったことを公表した。発生から収束までの経緯を8月上旬までに報告書にまとめ、医療関係者らに提供した。コロナ対応の経験を共有するためだった。

 米盛病院は8月20日の収束宣言からすぐにコロナ患者受け入れ病床を拡大。22床から14床増の計36床にした。これまで数多くの感染者を受け入れてきたほか、県内で初めてドライブスルーのPCR検査を開始するなどコロナ対応に尽力。情報の共有化もこうした取り組みと同様に「医療機関の責務」と考えていた。

 接種完了後の職員2人が感染したことから、医療従事者向けの3回目接種の実現にも力を入れた。ブレークスルー感染が判明したクラスター発生直後を振り返り、米盛公治院長は「世界各国から報告が上がっていた。まさかという思いと、やはりという複雑な思いだった」と語る。

 7月下旬には、接種を終えた職員約700人の抗体が、数カ月で半減したことを公表しており、このデータを厚生労働省へ提出。3回目接種実現に向け、河野太郎行政改革担当相と田村憲久厚生労働相に陳情した。

 情報公開をはじめコロナ対応を積極的に進めたのはなぜか。米盛院長は「県民にも、デルタ株の脅威や、ワクチン接種後にも感染するということを身近に感じてほしかった」と説明する。「コロナとの闘いは続く。県をあげて新型コロナに立ち向かう糧になれば」