乳児遺棄 被告の母擁護 熊本・赤ちゃんポスト蓮田健医師に聞く 「孤立出産 前後の記憶なくすことも」「妊娠・出産の秘匿尊重 寄り添う」

 2021/09/07 12:05
「赤ちゃんが犠牲になる事件をなくしたい」と話す慈恵病院の蓮田健院長=鹿児島市の南日本新聞会館
「赤ちゃんが犠牲になる事件をなくしたい」と話す慈恵病院の蓮田健院長=鹿児島市の南日本新聞会館
 鹿児島市の自宅で産んだ男児の遺体を遺棄したとして、死体遺棄の罪に問われた被告の母(24)=熊本市=の公判が鹿児島地裁で続いている。子を匿名で託せる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を全国で唯一運営する慈恵病院(熊本市)の蓮田健院長(55)は、被告を擁護する立場で出廷。取材に対し「不幸が繰り返されないように、秘匿性を尊重して寄り添う姿勢が必要だ」と訴える。

■公判で証言

 -被告は死体遺棄を争わないとする一方、妊娠や出産は「覚えていない」と主張している。

 「出産は大きな痛みを伴い、不安感が増すと痛みやストレスはさらに強くなるといわれる。被告は医療者が立ち会わず、麻酔もない中で一人で出産した。いわば極限状態だ。こうした孤立出産では記憶を無くすようなこともあり得る」

 「被告は血栓ができたり、寝続けて床ずれしたりと、出産後も体に大きな負担があった。被告と話をする中では、自分の有利に働くよう意図的に記憶がないと言っているとは思えない。今月1日の裁判では『孤立出産は精神的なストレスが大きい。前後の記憶が抜け落ちることもある』と証言した」

■「ゆりかご」159人の赤ちゃん預かる

 -慈恵病院のこれまでの取り組みは。

 「赤ちゃんの遺棄や殺人を防ぐため、2007年にこうのとりのゆりかごを始めた。20年度末までに鹿児島を含む全国から159人の赤ちゃんを預かってきた。妊娠の相談は年間6000~7000件ほど受ける。最近は新型コロナウイルス感染拡大が影響しているのか、遠方からの預け入れが少なくなっている」

■相談する環境が不十分

 -事件を防ぐには何が必要か。

 「望まない妊娠や出産をする母親には、さまざまな事情がある。精神疾患や障害のほか、虐待を受けた経験がある人も少なくない。決してだらしない訳ではなく、相談する能力や環境が足りずに困っているのだ。彼女たちは命がけで妊娠や出産の秘密を守ろうとする。匿名性や秘匿性を尊重し、寄り添うことが大切だ」

 「赤ちゃんが犠牲者、母親が犯罪者と呼ばれる不幸が繰り返されてはならない。駆け込み寺として、こうのとりのゆりかごを記憶してほしい。事件を起こした人の多くが、存在を知らなかったと答えている。各都道府県にそういった施設があることが理想だと考える」
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