没40年 向田邦子の肉声テープ 「読書は100通りの解釈」 かごしま近代文学館 常設展示を新装、海外旅の写真本刊行

 2021/09/19 21:15
埼玉県で開かれた講演会で話す向田邦子=1981年(かごしま近代文学館提供)
埼玉県で開かれた講演会で話す向田邦子=1981年(かごしま近代文学館提供)
 鹿児島ゆかりの作家、向田邦子(1929~81年)が世を去って40年。鹿児島市のかごしま近代文学館は常設展示をリニューアル、新たに見つかった肉声テープの音源を一部公開した。向田が旅先で撮影した写真を集めたムック本も刊行した。

 肉声テープは亡くなる半年前に埼玉県で開かれた講演会の録音で、小説の解説や読書の楽しみ方などについて語っている。保管していた新潮社が今年3月、同館に寄贈。120分テープから、直木賞にまつわるエピソードや受賞作「かわうそ」の裏話といった、話題ごとにまとめた約26分を公開した。

 向田は「読書は100通りの解釈があっていい。後から自分の歳月で納得すること、わからないままのこともある」と自由な読み方を呼び掛けている。残りの音源は順次公開する予定。

 ムック本は「向田邦子の目~彼女が見つめた世界」。アフリカの草原、ベルギーの猫祭り、ブラジルの市場など向田が撮影した写真約160点を紹介。街や路地裏の風景にエッセーからの一節が添えられている。

 館内の常設コーナーには、愛用したカメラや旅行かばんも展示。井上育子学芸員(45)は「肌の色の微妙な違いや異国の食文化、風景への驚き、好奇心が伝わってくる。向田さんの旅を追体験してほしい」と話した。

 B6判、100ページ。1200円。ホームページからも購入できる。同館=099(226)7771。

 向田は1981年8月22日、旅行中の台湾で飛行機事故に遭い、51歳で亡くなった。

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