九州最大級の名無しの滝 呼び名はあった クルキチ、フーチブル… 住民に相談なく公募、市長「申し訳ない」 鹿児島・奄美市

 2021/09/17 22:03
地元で複数の呼び名が伝わる滝=2020年6月29日、奄美市名瀬小湊(浜田太さん提供)
地元で複数の呼び名が伝わる滝=2020年6月29日、奄美市名瀬小湊(浜田太さん提供)
 奄美市は17日、名瀬小湊で確認された巨大な滝の名称公募を中止した。10日の公募直後から「古くから伝わる呼び名がある」と疑問の声が相次ぎ、17日に小湊集落の住民が朝山毅市長に「地元の名称を付けてほしい」と中止を要望。朝山市長は「相談なく公募してしまい申し訳ない。調査不足だった」と謝罪した。市によると、約3200件の案が寄せられていた。

 滝は小湊と和瀬集落の中間にあり、奄美大島東海岸に注いでいる。昨年5月、同市の写真家浜田太さんがドローンで撮影した。落差181メートルと計測した市は「九州最大の可能性がある」と10日に発表。地図に記載がなく、「地域に定着した統一名がない」として、全国に名称を募った。

 要望書を出した小湊集落の栄嘉弘町内会長(67)によると、滝は古くから住民に知られ、島の方言で黒い岩を意味する「クルキチ」と呼ばれていた。かつて滝周辺に「フツブル」という名の集落があったことから「フーチブルの滝」との呼び名も残る。栄さんは「出身者からも困惑の声が上がっている。愛着のある名を付けるべきだ」と憤った。

 また、和瀬集落では「ナナタンの滝」と呼ばれていた。和瀬出身で元県議の与力雄さん(76)によると、明治前後に商船が滝から水を補給するため、水をはじく大島紬7反(84メートル)を使ったとの言い伝えに由来する。与さんは「住民に聞き取りをせず公募したのは勇み足だ」と指摘した。

 市は集落の代表と協議し、意向を尊重した上で名称を検討するが、名称の決定自体を見送る可能性もあるとしている。