【かお】ヒガンバナが好きだった愛妻。がんで亡くなって13年。「たくさん植えたら、きれいだろうね」。〝遺言〟は人集う500メートルの赤い道になった
2021/09/30 21:13

妻を思い、13年間一人でヒガンバナを世話する上田篤さん
毎年9月下旬になると、伊佐市の国道268号近くにある田んぼの土手一帯が真っ赤に染まる。約500メートルにわたって、咲き誇るヒガンバナを13年間、一人で世話している。
1965(昭和40)年に妻の咲子さんと結婚。夏は農業に励み、冬は愛知で出稼ぎするなどして家庭を支え続けた。老後は、共通の趣味であるお酒とカラオケをたしなみ、たまにけんかしながらも楽しく過ごしていた。
そんな幸せな日々が続くと思っていた2008年4月、がんで愛妻を亡くした。にぎやかだった生活は、一気に静かになった。寂しさに暮れていた時、ヒガンバナ好きだった咲子さんが「たくさん植えたら、きれいだろうね」と話していたことを思い出した。
「よし、土手をヒガンバナでいっぱいにしよう」。手始めに、所有する田んぼの土手に生える草を払い、約75メートルに球根を植えた。周りの田んぼの持ち主に許可を得ながら、少しずつ赤いじゅうたんを広げていった。春先から雨の日でも毎日通い、手入れに没頭する。
近年は新聞やテレビで取り上げられることが増え、伊佐の観光名所になった。「楽しい思い出が事故で台無しにならないように」と、訪れる車の誘導にも余念が無い。
「みんなが褒めてくれるので、やめられない」と笑う。「たくさんの笑顔を見られることが何よりうれしい。腰は痛いが、元気なうちは咲かせ続ける」と意気込む。雨などで空いた時間は大口大田の自宅で読書にふける90歳。
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