コロナで東京の生活が一変。デザイナーになる夢は遠のいた。政治と生活は直結していると痛感。「優しい世の中になって」と1票に願いを込める【U30のまなざし 衆院選鹿児島】

 2021/10/22 09:05
出身の児童養護施設で子どもの面倒を見たり洗濯をしたりと一時的に働く女性=鹿児島市
出身の児童養護施設で子どもの面倒を見たり洗濯をしたりと一時的に働く女性=鹿児島市
■児童養護施設出身・23歳女性

 鹿児島市の児童養護施設出身の女性(23)は、5年前に巣立った施設に再び身を寄せている。東京や大阪で働いたが、新型コロナウイルスの影響で生活が一変。人間関係にも苦しみ、精神的に追い詰められた。頼れる親族はいない。帰省を勧めてくれた施設の園長に救われた。「あのまま残っていたら死んでいたかもしれない」

 親からの暴力などが原因で、4歳のとき保護された。高校を卒業するまで14年間、施設で育った。

 東京の焼き肉店に就職。朝から深夜までの激務だったが、常連客を作る接客術や新しいメニューの研究に夢中になった。デザイナーになる夢も描き、コツコツためたお金で通信制の専門学校に入学。刺激的で充実した日々だった。

 しかし、コロナが生活を変えた。2020年4月、政府が緊急事態宣言を発令。営業の自粛や時短を強いられ、給料は激減。6月末、大阪への転勤を命じられ、専門学校をやめざるを得なくなった。

 転勤先では仕込みや皿洗いを担当した。慣れない肉体労働で疲れ果てた。1日の食事はまかないの1食のみで済ませた。「施設出身」をやゆされた経験もあり、身近に相談できる人はいなかった。「もう生きていけない」。最後に園長の声を聞きたくなり電話をかけた。「帰ってこい」。心が軽くなった。

 子どもの相手や洗濯、清掃をするパート職員として当面施設で暮らせるよう環境を整えてもらった。今年1月に帰省。直後の2週間は短期滞在用マンションで待機し、費用は園長が立て替えた。

 ただ、施設で働くのは次の就職先が見つかるまで。「今後の生活を考えると不安」。未来を描けないのが実情だ。

 身寄りがなかったり、虐待を受けたりした子どもが暮らす児童養護施設。国の制度上、入所は原則18歳までで、退所後は社会的自立を求められる。

 国が今春発表した初めての実態調査では、退所後の若者の2割が経済的に困窮していることが分かった。相談できる大人が身近にいないなど支援の薄さが課題となっている。女性も「どこに相談していいのか。どんな公的支援があるのか。正直分からない」と語る。

 今まで政治への関心は薄かった。しかし緊急事態宣言を繰り返す国に振り回されたことで、政治と生活が直結すると痛感した。「苦しむ人に手をさしのべる優しい世の中になってほしい」。そんな願いを込めた1票を投じるため、初めて投票所に足を運ぶつもりだ。

取材後記・未来を託そう

 20年から教育分野を担当している。「新型コロナで生活と政治のつながりを感じた」という女性に共感した。政策よりも、不祥事で政治家を知る方が多く、これまであまり関心を持てなかったからだ。政治を動かす人の決定次第で、生活が百八十度変わることがある。意思表示をすることが自分たちを大切にすることにつながっているのではないか。無関心だった私たちこそ、今回の選挙に未来を託すべきだ。(鹿島彩夏、25歳)