【衆院選鹿児島 論点を問う】消費税負担重く、健全財政は遠く 「議員の身を切る改革」はどうなった?

 2021/10/23 07:35
 「買い物は特売日を選ぶ。でも、やっぱり消費税の負担は大きい」。11日、鹿児島市上福元町のディスカウントストア。同市宇宿3丁目の主婦、柿元聡美さん(32)が、おむつの値段などを確認しながら食料品や酒を買い物かごに入れていた。

 会社員の夫(35)と、1歳から小学2年の4人の子育てに励む。インターネットの活用やまとめ買いで節約するが、子どもの成長とともに食費や教育費は重くのしかかる。「消費税はこの前まで5%だったのに、8%になったらあっと言う間に10%」と嘆く。

 消費税が10%になって2年余。新型コロナウイルス下の経済対策として、野党が衆院選の共通政策に5%減税を掲げ、争点に浮上した。与党は消費税率を当面維持しつつ、子育て世帯などへの給付金を打ち出す。

 柿元さんは期待感を示す一方、表情は浮かない。「家計は助かるが、国の借金ばかり増え、結局は子どもたちにつけを回すだけ。先行きは示されず、正直なところ感心できない」

■見えぬ財源

 消費税は2014年4月に5%から8%、19年10月に10%(軽減税率8%)に引き上げられた。社会保障財源に充てられ、幼児教育・保育の無償化など目に見える使途はある。しかし少子高齢化が進む中、年金の財源をはじめ、将来に安心感を覚える状況にはない。

 九州経済研究所(鹿児島市)の調査が裏付ける。5月の鹿児島銀行来店者718人への調べでは、今後の暮らし向きが「良くなる」は8.5%。「悪くなる」は25.7%と大きく上回り、不安要素に年金、医療・介護費の負担増を挙げた。

 福留一郎経済調査部長は「国民が年金など国の制度を信用していないことが問題。国会で議論して財源を含めた安定的な道筋を示し、国民が納得できる説明が必要」と訴える。

■身を切る改革

 消費税率と一体的に語られるのが国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)だ。政府は2025年度までに黒字化する目標を掲げる。専門家が「黒字化は絶望的」と口をそろえる中、衆院選を前に国の財政が注目される出来事があった。矢野康治・財務次官が与野党の経済対策を「ばらまき合戦」と指摘し、国家財政の破綻に言及したからだ。

 元鹿児島大教員で甲南大学の林亮輔教授(財政学)は財務次官の主張に同調し、「目先の公約にとらわれず、財政赤字が今後の生活にどのような影響を与えるか知り、各党が財政健全化にどう対応するか踏まえ、投票するべきだ」と訴える。

 「社会保障の充実のため、いずれは10%超の税率が必要」とも指摘される消費税。そもそも5%からの引き上げは「議員の身を切る改革」とセットだった。だが削減幅は15人にとどまり、当初見通しより後退したままだ。

 ガソリンなどの物価が高い離島でも消費税の負担感は根強く、不満の声が上がる。子育て支援に取り組む徳之島町のNPO法人「親子ネットワークがじゅまるの家」の野中涼子理事長(45)は「国民だけに痛みを押し付けず、政治家は自ら給与や定数の削減をしっかり実行してほしい」と願う。