26歳で挑んだ地方議員選挙。同世代やシングルマザーの切実な声が子育て支援の背中を押す。コロナ下、浮き彫りになる「貧困」。霞が関や永田町は遠い。国会議員の目は地方に向いているのか【U30のまなざし 衆院選鹿児島】

 2021/10/25 09:00
同世代の住民の話に耳を傾ける日置友幸さん=南九州市頴娃町の子育て支援センターつみき
同世代の住民の話に耳を傾ける日置友幸さん=南九州市頴娃町の子育て支援センターつみき
 「食べ物を持ってきてくれたの。ありがとう」。親子でにぎわう南九州市頴娃町の子育て支援センター。市議の日置友幸さん(33)は幼児からおもちゃのニンジンを受け取り、笑顔で応じた。

 議員として特に子育て世代のサポートに力を入れてきた。自身も妻(32)と共に2人の子の育児のまっただ中。週末はわが子を連れて支援センターを訪れ、保護者と意見を交わしている。

 議員を目指したきっかけは川辺高校3年の時、生まれ育った川辺町が平成の大合併で南九州市になったことだ。古里の姿が変わる戸惑いと同時に、合併を決めた町議会の力を目の当たりにした。

 26歳で市議選に初挑戦。当時は無職で、資金も支援組織もなかった。街頭でビラを渡し続け、無我夢中で駆け回った。954票を獲得し、立候補者22人中11番目で当選した。現在2期目を務める。

 心掛けるのは「住民の声に耳を傾けること」。夏休みに子どもを預ける場所が欲しい。そんな要望に応え、公民館を活用したワークショップで実現した。会員制交流サイト(SNS)で子どもの様子をリアルタイムで保護者に伝えるなど、今どきのツールを使いこなしている。

 新型コロナウイルスの感染が広がった昨年以降、実感するのは貧困を訴える人が地元でも増えたことだ。

 「子どもの制服が買えません」。今年3月、シングルマザーから切実な声が寄せられた。制服など物品類が購入できないとして、子どもの高校進学をあきらめかけていた。そこで社会福祉協議会に相談。一家はコロナ下で支援を拡充した貸し付けを受け、高校に行かせることができた。

 鹿児島県が発表した2018年度の市町村民所得推計によると、南九州市の1人当たり所得は247万3000円。県全体の250万9000円より低くなっている。しかし、生活の困窮は同市に限った問題ではなく、国政の大きな課題だ。

 衆院選では、現金給付などさまざまな経済支援策が各党の公約に並ぶ。財源の裏付けはあるか。経済全体を再生させることにつながるか。「国は今回の支援の枠組みを一過性のものにしてはならない」と訴える。

 霞が関や永田町は鹿児島からあまりにも遠い。だからこそ、国会議員は地元にアンテナを張り巡らすべきだと考える。

 「社会的な弱者は少数派で、必ずしも得票に反映されないかもしれない。しかし、弱い人を救うことこそ国の責任だ」

取材後記・当選後のビジョンを見定めたい

「コロナ下で生活に困る人々が増え、潜在的な生活困窮者の存在が浮かび上がった」。住民と顔を突き合わせて意見交換する日置さんはこう指摘した。一方、衆院選では選挙カーが連日走り回り、候補者の名前を連呼することに終始している気がする。同世代の友人からは国政が鹿児島に何をもたらすのかはっきりしない、という声もよく聞く。有権者として報道人として、各候補者の当選後のビジョンを見定めたい。(寺師周平、25歳)
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