結婚後、妻の姓を名乗る夫婦は4%。「昔からそういうもの」。同姓に抵抗はなかったが「選ぶ自由は尊重されるべきだ」【U30のまなざし 衆院選鹿児島】

 2021/10/27 09:00
結婚式の相談に訪れたカップル。妻が夫の姓に変える夫婦がほとんどだという=鹿児島市(写真と記事は関係ありません)
結婚式の相談に訪れたカップル。妻が夫の姓に変える夫婦がほとんどだという=鹿児島市(写真と記事は関係ありません)
 鹿児島市に住む銀行員の安永佳奈さん(27)は昨年10月、会社員の唐鎌(からかま)雄貴さん(26)と結婚し、「唐鎌」に姓を変えた。

 佳奈さんは職場で結婚後の姓を使う。「仕事で関わる人に名字が変わったことを説明したり、(公的書類の)変更手続きをしたりするのは大変だが、同じ姓になる楽しみもあった」と明かす。「きょうだいは妹しかいないので、将来的に姓がなくなる可能性を考えると悲しいけど」

 現在の民法は、婚姻時に男女どちらかが姓を改めるよう規定する。ただ厚生労働省の調査によると、2015年時点で婚姻総数約63万5000組のうち、妻の姓にしている夫婦は4.0%。姓を変えるのは圧倒的に女性が多い。

 規定見直しを求める声は根強いが、最高裁は2015年と21年、いずれも「合憲」と判断し論議を呼んだ。今回の衆院選では法制化を公約に掲げる党が多い一方、自民党は消極的な姿勢だ。

 雄貴さんは、今回の衆院選で選択的夫婦別姓が論点になっていることに「なぜ今、注目されているのかな」と首をひねる。「(結婚で姓を変えるのは)昔からそういうものだと思っていた」という2人。今回同じ姓になることを抵抗なく選んだが、「名乗る姓を選ぶ自由は尊重されるべきだ」と口をそろえる。

 「2人が結ばれることと姓が変わることは全く関係がない。多様な夫婦の形が法で守られる社会が必要だと、若い世代に分かってもらいたい」。台湾で働くパートナーと籍を入れていない鹿児島大准教授の菅野康太さん(37)は訴える。

 学生らと接し、自分の立場に反対意見を言われたことはない。「自分より下の世代の方が、上の世代よりも(夫婦別姓に)肯定的」と感じる。「若い人には、別姓や同性婚など、さまざまな夫婦のあり方に関心を持ってほしい」と願う。

 鹿児島市内の小学校教員、原口晴子さん(54)も同じ願いを持つ一人だ。03年に教員仲間の夫と結婚。籍を入れたが、職場では旧姓の「原口」を使おうと決めた。ただ周囲の反応は冷たかった。「何で面倒なことを」「旧姓にこだわるなんて細かくて厳しい人なのでは」。心ない言葉を投げられたこともあった。

 それから20年近くたつが、今も姓を選べる社会とは言えない。現状を変えるには若者に関心を持ってもらわねば、と原口さん。思いを伝えようと、若い世代に必ずかける言葉がある。「自分の姓を大事にしてね」

取材後記・名字のあり方、話し合って

 好きな人と同じ名字の自分を想像したことがある人は多いのではないか。私もその一人だ。でも、そもそも名字って何だっけ? 正直、取材を通してよく分からなくなっている。記事に書ききれなかったが、「籍を入れる」という表現や家制度の是非など、多くの課題を抱えていると感じた。これらは既婚者だけの問題ではない。名字のあり方を意識しない人も、選挙を機に家族や友達と話し合ってみてはどうだろう。(佐藤鈴奈、26歳)