【衆院選鹿児島 論点を問う】「幼保一元化」 枠組み論よりも実効性の高い政策を

 2021/10/27 07:37
 子どもの可能性に投資する社会-。鹿児島市の川田杏奈さん(27)が、3人の子を育てる母として考える理想像だ。長男は生まれつき足に障害があり、医療費や特注の靴など高額な装具代がかかる。「1人を育てるために十分な額が支給される仕組みがほしい」。子ども1人当たり月1万~1万5000円支給する児童手当の増額を望む。

 同市で子ども食堂を運営する川田さん。食事の提供だけでなく、親子の居場所づくりも重視する。虐待認定された出水市の女児が2019年8月に死亡した事案を踏まえ、児童相談所など関係機関との連携強化も必要、と話す。「国には虐待防止を含めた子育て対策を期待したい」

 子ども関連施策は主に文部科学省、厚生労働省、内閣府が担う。国は施策を一括して所管する「こども庁」創設を掲げる。文部科学省が所管する幼稚園と、厚生労働省が所管する保育所の機能を一つにする「幼保一元化」も検討テーマになっている。

■ハードル

 しかし満3歳以上の幼児が就学前に通う幼稚園と、仕事や病気を抱える親に代わって幼児を預かる保育園は求められている役割が異なるのも事実だ。この点を踏まえ、南さつま市のこども園園長で鹿児島県保育連合会会長の下園和靖さん(57)は「幼保一元化はハードルが高い。急に実現することは難しい」とみる。縦割り行政の解消が見込める庁創設に期待は寄せつつも、「選挙のタイミングに合わせ目玉を出したようで違和感がある」。

 下園さんは、小学校教員など教育現場で20年以上勤務。子育てに苦労している親を多く見てきた。学校と比べて親と接する機会が多い保育施設は、「子育てだけでなく“親育て”の役目もある」と感じている。

 一方で保育施設の経営は厳しい。目下の懸念は、人口減少が進む地方での保育士のなり手不足だ。人件費を引き上げて解消したいが、現状ではままならない。利用者数や園児の認定区分など、保育のサービス内容に応じて施設に支払われる「公定価格」の拡充を訴える。「国に保育施設の重要性を理解してもらい、財源を確保してほしい」

■憲章の理念

 今年は、「社会が子育ての主体」という理念を掲げる児童憲章が制定されて70年の節目でもある。鹿児島大学教育学部の前田晶子教授(51)は「今の社会は各家庭に子育ての責任を押しつけがち。改めて憲章の理念を重く受け止めてほしい」と話す。

 日本は欧米など海外諸国と比べ、教育に関する公的支出割合が低い点を問題視する。「少子化対策の面からも十分な予算配分は必要。抜本的な財政改革を含め、監督官庁の枠組み論にとどまらず、実効性の高い政策を提示してほしい」と求める。

 さらに前田教授は、子どもの意見を尊重しない社会全体の風潮を懸念。「コロナ禍で修学旅行を実施すべきかや感染対策で何ができるかなど、生徒自ら議論し考える機会がほとんどない」。国は子どもの意見に耳を傾ける環境づくりをすべきだ、と訴える。